国内小売り最大手のイオンが苦境にあえいでいる。1月9日に同社が発表した2014年3〜11月期の連結決算は、
営業利益が前期比48%減の493億円とほぼ半減した。金融やドラッグストア、海外事業が堅調に推移する一方、
主力のGMS(総合スーパー)事業の赤字幅が一段と拡大したことが主因だ。消費増税後の環境変化に対応できず、
客離れが起きており、既存店売上高の前期割れが続いている。
決算説明会の席で、若生信弥・専務執行役グループ財務最高責任者は、「消費増税以降、(既存店の)
回復が遅れている。小売りを取り巻く環境は厳しい」と述べた。また岡崎双一・専務執行役GMS事業最高責任者は、
「消費増税後の対応に失敗した。価格政策のミスだった」と分析。外部環境のみならず、イオン自身の対策不足も認めた。
売上高にあたる営業収益は、ダイエーの連結化や新店効果が寄与し、前期比10%増の5兆0770億円だった。
また純利益は、持ち分法適用会社だったドラッグストアのウエルシアホールディングスを連結子会社化したことで、
316億円の特別利益を計上し、前期比47%増の293億円だった。
本業のもうけである営業利益半減の元凶はGMSだ。中核事業子会社であるイオンリテールの3〜11月期の
営業赤字は182億円(前期は57億円の黒字)。3〜8月期では75億円の赤字だったが、直近3カ月で107億円の
赤字がさらに上乗せされた格好だ。
大型化など改装店舗は好調の一方、既存店が前期比2.4%減と不振。天候不順の影響もあり、特に衣料品が
4.1%減と大きく落ち込んだほか、食品も2.3%減と苦戦した。岡崎専務執行役は「改装は順次していくが、(店舗数が多く)
分母が大きいのでどれぐらい早くできるか」と述べた。
加えて、2013年8月に連結子会社化したダイエーが、158億円の営業赤字を計上。GMSから食品スーパーへの
転換を進めているが、まだ道半ばだ。連結化で売上高は増えたものの、利益段階では大きく足を引っ張っている状況に変わりはない。
GMSに加え、業績悪化の要因となったのが、スーパー・ディスカウント・小型店事業だ。3〜11月期で1億円の
赤字に転落(前期は74億円の黒字)。「マックスバリュ」を展開するスーパー事業は、東北、中部、九州などで苦戦。
コンビニ事業「ミニストップ」は、営業利益が前期比37%減の26億円に落ち込んだ。
それでもイオンは、2015年2月期の通期業績予想を期初から据え置いたままだ。営業利益は前期比17%増〜22%増の
2000億〜2100億円を見込む。だが、11月までの進捗率は、わずか20%台であり、達成はほぼ不可能。これに対し
若生専務執行役は、「チャレンジングな数字だが、打てるべく施策を打っていく」と述べるにとどまった。
イオンが復活するかどうか、真価が問われるのは来期以降だ。岡田元也社長は足元の苦戦を踏まえて、ヒト・モノ・カネ
すべてで戦略を再構築中で、いずれも来期以降の成否にかかわってくる。
カネの面では投資計画を大きく変える方針である。不振が続くGMSやスーパーは、新規出店を大きく抑制する一方、
既存店の改装を活発化していく。一方で、ディスカウントや小型店は成長分野と位置づけ、新店投資を積み増す。
ASEANや中国が好調な海外事業では、従来計画より大幅に投資を増やすなど、全体でメリハリをつける方針だ。
合わせてモノの面では、これまでの買収などで複雑化しているGMSやスーパー業態について、イオンスタイルストアや
フードスタイルストアなど5つの業態に再編成して、新たに店舗作りする狙いだ。
ヒトの面では、2016年2月期から持ち株会社の人員を半減させる一方、各事業会社に振り分けて、同時に権限委譲を
進めていく。2008年に持ち株会社制に移行し、仕入れなどを本社に集約化して効率化を進めたが、その結果、
組織が肥大化していたという。これに伴い、主要事業会社であるイオンリテール、イオンモール、ダイエーの経営体制を
2月に刷新、社長をすべて交代させ、GMSやスーパー事業を早期に立て直したい方針だ。
はたして挽回できるか。セブン&アイ・ホールディングスが微増ながらも最高益を続ける中、反転攻勢できない
巨艦イオンの手探りは続く。
http://toyokeizai.net/articles/-/57712