現行の暴力団対策法からいえば、稲葉地一家は、山口組弘道会の若頭補佐をつとめる幹部組織。
犯行に及んだ稲葉地一家の元幹部組員たちは起訴され死刑が求刑される公算が強い。被害者
遺族が稲葉地一家、弘道会、山口組の三者を相手に使用者責任賠償を問うのはその先である。
この稲葉地一家と愛知県警の癒着ぶりもまた常軌を逸した関係にあった。
昔から博徒として有名な稲葉地一家。二〇年以上も前からこの一家のM組長は違法カジノの運営
で巨万の金を稼いでいた。その最盛期、名古屋市内には二〇カ所以上の違法カジノが県警に摘発
されることもなく、白昼堂々と営業を続けていた。
最近まで違法カジノ摘発に専従していた保安課の刑事によると「ことごとくガサ入れ(の情報)が洩れている、
それもどうやら幹部から抜けている」と、警察内部と暴力団との驚くべき実態を証言した。
金も動く。違法カジノの場合、刑事がヤクザにガサ情報を漏らしてやると、一回当たり一〇〇万円とも
二〇〇万円ともいわれる見返りを渡している、と証言する関係者もいるのだ。
警察庁の安藤長官は全国の警察本部に対して徹底した弘道会壊滅を指示している。
「弘道会の弱体化なくして山口組の弱体化はなく、山口組の弱体化なくして暴力団全体
の弱体化はなし」という訓示は訓示として、弘道会と愛知県警の内部、特に捜査四課、
生活安全課組織犯罪対策課の一部には間違いなく犯罪的癒着関係を続けている現職の
警察官がいる。
暴力団の解体は社会的にも重要だが、暴力団の影に隠れて腐敗する警察組織の方が、
比較にならぬほど重大ではないのか。弘道会が短期間に山口組の最大勢力になることが
できたのは、皮肉にも汚辱にまみれた警察官の存在があったからだ。
冒頭の激震とは、愛知県警の激震のことだ。
(週刊金曜日ニュース 5月13日号)
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=711