米グーグルが開発した眼鏡型端末「グーグルグラス」について、米軍が戦場で使用するための実験に着手した。
右目の小型ディスプレーに敵の狙撃手の位置のほか、救出対象の負傷した味方兵士の居場所などを表示し、作戦遂行を支援することを想定している。
軍需メーカーが開発した同様のハイテク兵器は高額なうえ、ヘルメット型で重く、使い勝手も悪いため、安くて使いやすいグーグルグラスに着目した。
身に付けられるウエアラブル端末はIT各社から続々と登場し注目を集めているが、軍需という新たなニーズにも注目が集まりそうだ。
「バットマンプロジェクト」と名付けられたグーグルグラス軍事転用計画は、米空軍が4月17日に公式ホームページ(HP)で明らかにした。
「われわれは、戦場の兵士の任務遂行の効率と成果の向上を目指し、操作が簡単で情報を直感的に伝えられるディスプレーの活用を進める」
オハイオ州にあるライト・パターソン空軍基地の部隊に所属する研究チームの責任者、グレゴリー・バーネット博士は、米メディアにこう語った。
実験の成果は陸、海軍とも共有する。
グーグルグラスは今月13日から米国で一般販売が始まったばかり。
小型ディスプレーに地図やメールなどの情報が表示されるほか、音声操作で写真や動画の撮影ができる。
公式HPや米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)などの報道によると、研究チームはグーグルグラス対応ソフトを開発し実験を進めている。
その一つが隠密作戦を支援する「脅威察知ソフト」。
敵の狙撃手の位置情報をディスプレーに表示したり、兵士同士が声を出さずに文字メッセージで情報を交換したりできる。
さらに負傷し敵地に取り残された味方兵士を救出する空軍特殊部隊のパラレスキュー隊員向けのソフトも。
兵士の体に装着されたモニターから心拍数や血中酸素濃度といった生体情報(バイタルデータ)を、パラレスキュー隊員が持つスマートフォンに送信し
ディスプレーに表示。隊員はそのデータを確認し負傷兵の状態に配慮しながら救出作戦を遂行し、治療もそのデータを見ながら素早く行うことができる。
ソフト開発を担当するアンドレス・カルボ氏は「グーグルグラスとスマホを併用することで、未知の状況下や目視できない場所での任務に
大きな威力を発揮するだろう」と期待する。
■格安で軽量課題は強度
戦闘中の兵士が両手を自由に使えるハンズフリー状態にするヘルメット一体型ディスプレー装置はすでに実用化され
空軍のパイロットのほか、海軍特殊部隊「シールズ」などで使用されているという。
ただ、1万ドル(約101万円)程度と高価なうえ、頑丈な分、重くて兵士の動きが阻害される。
情報の処理能力や送受信の性能にも問題がある。その点、グーグルグラスは1500ドルとハイテク兵器としては格安だ。
軽量で消費電力も少なく、視界も遮られない。財政難のおり、コスト削減という米軍に課された使命にも合致する。
課題は「過酷な戦場ではすぐ壊れてしまう」という強度の問題。
だが、バーネット博士は、「グーグルであれ、別の企業であれ、より耐久性の高い製品の開発を促せばいい」と語る。
グーグルなどのIT企業が、高コストの既存軍需メーカーに取って代わるかもしれない。
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