労災補償「通勤災害」の範囲は
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/special/feature/CO005411/20140410-OYT8T50053.html?from=ytop_os_txt2 読売新聞・大手小町 2014年04月17日
◇「寄り道」定義まず確認を
通勤時に、転倒などで思わぬけがをすることがある。その際、治療費などが労
災保険で補償されるのが「通勤災害」。ただ、寄り道で仕事や通勤と関係ない行
為をした時などは、通勤と認められない場合があるので注意したい。
◇12年度7万人
労災保険は、ほとんどの事業所に適用され、業務が原因の「業務災害」と、通
勤によって被害にあった「通勤災害」を補償する。通勤災害の新規受給者は、2
012年度で7万人。年々増加傾向にある。通勤途中に駅の階段で転んだり、車
や自転車通勤などで事故に遭ったりしてけがをした場合などには、通勤災害とし
て給付を受けられる場合が多い。けがをして、医療機関にかかる際、健康保険で
はなく、労災保険が適用されると、治療費のほぼ全額が補償される。4日以上休
業した場合なども補償がある。
通勤とは、自宅と就業場所の間だけでなく、単身赴任先の住居と帰省先の住居
の間も含まれる。労災に詳しい弁護士の佐久間大輔さんは、「注意したいのは、
通勤の手段と経路」と話す。「合理的」な経路と方法で通勤する場合に給付の対
象になる。鉄道、バス、自動車、自転車、徒歩などは合理的な手段とされている
が、会社に届け出ていないと認められない場合があり、「個別の状況で判断され
る」(厚生労働省労災補償部)。経路では、工事中など交通事情による遠回りは
合理的とされるが、著しい遠回りは合理的とされない。
◇「逸脱」と「中断」
特に気をつけたいのが、通勤とは関係のない目的で通勤経路をそれる「逸脱」
や、通勤経路上で、通勤と関係ない行為をする「中断」=図参照=。関係ない行
為をした後は、通勤とはならないのが基本。ただ、厚労省が定めた例外があり、
日用品の購入など「日常生活上必要な行為」を行った場合は、通勤経路に戻った
後から通勤となる。また、通勤の途中や通勤経路の近くで、トイレに行くなどの
「ささいな行為」は、通勤の範囲内だ。
佐久間さんは、「私的な行為をすると通勤とはならなくなる。そういう時にけ
がなどをしても、補償は受けられないものと思って慎重に行動すべきだ」と話す。
飲み会や接待は、「話す内容が業務と関連が強い」「職場から参加が義務づけ
られた」などの場合、帰途に遭った事故は通勤災害になる時があるという。
病院では、けがが通勤中だったことを伝える。労災指定病院の場合、治療費を
払わずに労災認定の手続きをする。労災指定でない病院では、治療費をいったん
払い、認定請求する。車の事故は、自賠責保険などで補償を受けるが、長期の治
療など労災保険の方が手厚い部分がある場合はその部分を適用できる。
◇労基署に相談
通勤災害は、労働基準監督署が認定する。会社から証明を得たうえで、書類に
より病院か労基署に提出し、請求する。社会保険労務士の井戸美枝さんは、「労
災対象なのに請求していない人も多い。対象になるかどうかは労基署に相談を」
と話す。