JR四国で車両故障が相次いでいる。本年度に入り、23日までに13件の車両故障が起き、
既に昨年度1年間の発生件数(12件)を超えた。中でも目立つのが車両の老朽化が原因と
みられるトラブル。厳しい経営環境の下、新車の積極投入は難しく、「老朽車両」の割合は
今後さらに高まる見通し。4月には、車両の維持、補修を専門に行う「車両課」を新設したが、
続発するトラブルに対策が追い付いていないのが現状だ。
◆「異常事態」
同社によると、本年度の車両故障件数は既に13件。
昨年度は年間12件、2011年度は13件と、発生件数はほぼ月1件のペースだったが、
今年は7月と10月には月3件のトラブルが集中するなど「異常事態」(同社)となっている。
本年度に起きたトラブルのうち、車両の老朽化が原因とみられるのは少なくとも4件。
10月17日には通勤時間帯に予讃線の鬼無駅で普通列車が制御装置の経年劣化が
原因で動けなくなり、1万人近くに影響が出た。トラブルを起こした車両は、
JR東日本から払い下げを受けた中古車両で、製造から37年がたった老朽車両だった。
◆他山の石に
同社が保有する426車両のうち、一般的に老朽車両とされる製造から30年以上が
たったものは41両。最も古い客車両は1974年製で、製造から39年が過ぎている。
同社は、鉄道事業の赤字を経営安定基金で穴埋めする厳しい経営を強いられており、1両2億円以上
という新型車両の導入は容易でない。この10年間、同社が導入した新型車両は32両にとどまる。
JR四国と似た経営体質のJR北海道でも、車両故障の多発が問題となっており、走行中の特急が
出火するなど重大トラブルも起きている。泉雅文社長は「資金の確保が難しいなどJR北海道と
経営課題は似ている。冬の厳しさなどの環境の違いはあるが、他山の石としたい」と話す。
◆「時間ない」
新車の積極投入が難しい以上、老朽車両は今後も増える。4年後の17年には
電化30周年を迎え、電化に合わせて導入した38両の電車が一気に老朽車両
になる。電車は、気動車に比べ、構造が複雑でメンテナンスにも手間がかかる。
古い車両を使うには、点検・保守の技術向上が欠かせない。
しかし、JR四国の整備現場では、団塊の世代の大量退職などで、ベテラン
整備士から若手への技術伝承が十分にできていないという課題も抱える。
老朽車両の増加を踏まえ、JR四国は4月、車両整備と乗務員の指導を担当する
「運転車両課」から、車両整備を行う「車両課」を独立させる組織改革を行った。
車両課の新設で、車両トラブルの責任体制を明確化。これまでの故障原因を
分析して点検項目を見直すほか、技術伝承にも力点を置く考えだ。
しかし、老朽化対策の切り札になるはずの車両課を新設した矢先、
老朽化が原因のトラブルが続発。各種の対策が急を要することを示した。
同課の吉本英三郎課長は「手をこまねいている時間はない。
一つ一つの対策を早急に進め、安全に万全を期したい」としている。
■記事:四国新聞社
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/social/20131224000139 ■関連:JR四国
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