【娯楽】カジノ解禁法案、山積する課題〜誘致や悪影響の具体的規定なく、甚大な社会的損失懸念も[13/12/03]

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1Biz+依頼スレ225@のーみそとろとろφ ★
 超党派の国会議員による国際観光産業振興議員連盟(IR議連=通称・カジノ議連)が、
カジノ解禁推進法案(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)を議員立法で
一両日中にも国会に提出する公算が高くなっている。10年来のテーマがいよいよ本格的に動き始めたという感がある。
しかし、法律専門家としての観点から見れば、かなり多くの懸念事項が残された状態での船出である。
それは、この法案が通常の法律とは違い、いわゆる「プログラム法」と呼ばれるものであり、
カジノ解禁の具体的内容がほとんど規定されていないことに起因する。
今回提出されるカジノ解禁推進法案の問題点を、以下に検証する。
●プログラム法とは

 プログラム法とは、特定の政策分野について、具体的な制度内容そのものではなく、
国の目標や実現に向けた手順などを規定する法律のことである。
プログラム法は、単に「工程」(プログラム)を示すだけであるから、成立しても、それだけでは政策は実現しない。
聞き慣れない言葉であるが、最近では、年金、医療、介護などの社会保障制度の改革について、
このプログラム法という仕組みが用いられている。

 今回のカジノ解禁推進法案も、単にカジノ解禁という政策目標実現に向けたスケジュールと、
ごく基本的な骨格だけを示したものにすぎない。
カジノ解禁の具体的な制度設計は、1年以内をめどとして立案されるカジノ解禁実施法(特定複合観光施設区域整備法)
においてなされることになっている。この実施法が成立して初めて、実際にカジノが解禁される。
つまり、どのような制度設計でカジノを解禁するのかという具体的な内容の詰めはこれからなのである。

●お台場カジノ構想の実現性

 今回のカジノ解禁推進法案が、プログラム法という特殊な法律であることを説明したが、それでもなかなかわかりにくい。
そこで、まずは、「お台場カジノ構想」という具体的なトピックで検証したい。

 カジノ解禁推進法案が国会に提出される以前から、日本でカジノが解禁されるならば、
フジテレビ、三井不動産、鹿島建設などによる「お台場カジノ」がほぼ決定的といわんばかりの報道が多くなされている。
確かに、カジノを含めたレジャー、ビジネス、エンターテインメントの統合型リゾートの法制化により、
観光や経済の振興を図るという法案の趣旨からすれば、
政治と経済をめぐる人流・物流の中心である東京・台場でのカジノ設置は魅力的であるように思える。
 しかし、法的にいえば、今回のカジノ解禁推進法が成立したとしても、
それで「お台場カジノ」が内定するなどということは、およそあり得ない。
なぜならば、カジノ解禁推進法は単なるプログラム法であって、
カジノ設置区域はおろか、その選定基準や選定主体などについてさえ、一切規定していないからである。

続きます>>2-7
http://biz-journal.jp/2013/12/post_3514.html
2のーみそとろとろφ ★:2013/12/07(土) 02:56:52.34 ID:???
>>1より
 さらに具体的に説明しよう。カジノ解禁推進法案には、カジノ設置区域の選定基準は規定されていないが、
のちに制定されるカジノ解禁実施法において規定される基準は、
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)による規制よりも大幅に厳格なものになると想定される。
なぜなら、賭博であるカジノの解禁による「負の影響」(風紀の乱れや治安悪化などの恐れ)を考慮すれば、
賭博に至らない遊技(パチンコなど)を対象とする風営法による規制よりも緩やかであってはならないからである。
一部報道によれば、お台場カジノは、江東区青海一丁目付近が予定されているとのことである。
この辺りは、規制が緩やかな都市計画法上の商業地域などであり、風営法上の規制はクリアする。
しかし、徒歩圏内に、小学校や中学校などがある。
そういった保護対象施設が徒歩圏内にあり、未成年者への影響も懸念される(賭博施設の周辺に猥雑的雰囲気が醸成される
可能性は否めない)にもかかわらず、賭博であるカジノを解禁してよいのかという問題がある。

 また、そもそも、国の首都のど真ん中に賭博施設を設けるということが、日本という国のかたちとして望ましいのかということもある。
長崎県佐世保市のハウステンボスへのカジノ誘致を目指しているHIS澤田秀雄会長は、
「首都にカジノを置くと、その国は二等国になってしまう」と発言している。その賛否は別として、傾聴に値する意見である。

 上述したような問題、すなわち、どのような考え方に基づき、
どのような区域であればカジノを設置してもよいとするのかという選定基準や評価要素は、
カジノ解禁推進法案には一切規定されていないのである。

●誘致をめぐる死闘

 カジノ解禁推進法案では、自治体の申請に基づき国が認定した区域(特定複合観光施設区域)において、
国の許可を得た民間事業者がカジノの設置及び運営を行うという建て付けになっている。
少なくとも当初は、極めて限定された区域においてのみカジノ施行が認められる方針である。
よって、カジノ施設誘致を目指す自治体間の競争は、必然的に熾烈なものとなる。
カジノ解禁推進法成立後1年以内をめどとするカジノ解禁実施法の成立を待って、その時点から動き始めるというのでは、
その自治体が認定レースに勝ち抜くことはほぼ不可能である。

 従って、カジノ解禁推進法案には、カジノ設置区域の選定基準や評価要素は一切規定されていないにもかかわらず、
同法案が成立すれば、自治体によるカジノ施設誘致合戦が一気に加熱することとなる。
既に全国で20か所以上の自治体や団体がカジノ誘致に手を挙げている。

 カジノ解禁推進法案の有力な立案関与者によれば、
カジノ施設運営開始に至るまでの各自治体における今後のスケジュールは、概要、以下のとおり想定されている。

(1)国が定める区域認定の選定基準に依拠し、自治体がカジノを含む複合観光施設(IR)の構想及び計画を立案し、
国に対して、申請・提案をなし、認定を受ける

(2)自治体が国からの認定を受け、具体化のための方針を定め、開発を担う民間事業者を選定し、
開発と施行にかかわる条件を当該事業者と詰め、開発協定を締結する

(3)協定に従い、当該民間事業者が国からの許可を受け、資金を調達し、IRを整備し、
運営のための全ての条件を満たして、運営を開始する
続きます
3名刺は切らしておりまして:2013/12/07(土) 02:57:00.86 ID:9NJqxbiP
>>2より
 このいずれの段階においても、カジノ誘致を目指す自治体には多額の費用がかかる。
すなわち、一部をあげるだけでも、市場性調査、可能性調査、社会経済影響度評価など、
自治体による企画・構想や全体計画策定などに必要な諸費用、住民の理解を得るために必要な諸費用、
国が要求する認定申請書類の作成に必要な諸調査の実施費用、施行基本方針を策定し、
民間事業者からの公募書類を作成するための諸費用、入札手続諸費用、
外部コンサルタントや法務アドバイザーとしての弁護士を起用するための費用、
施設周辺のインフラ整備費用などが自治体の費用となる(当然ながら、その原資は住民が負担する税金である)。
自治体が負担すべき費用を、カジノ施設の運営などを狙う民間事業者に肩代わりさせることは許されない。
なぜなら、そのようなことをすれば、自治体と民間事業者との間に癒着が生まれ、
カジノ施設の運営などを行う民間事業者の選定に係る自治体の判断が歪められるからである。

 カジノ誘致を目指している自治体の中には、カジノ解禁推進法案が国会に提出される以前の段階においてすら、
すでに1000万円を超える費用を支出しているところもある。
自治体が国からカジノ設置区域の認定を受けられなかった場合、自治体が区域の認定は受けられたが、
適切な民間事業者を選定できなかった場合、自治体が民間事業者を選定したが、
当該事業者が国から許可を得られなかった場合、民間事業者が国から許可は得られたが、
資金不足などによりIRを実際に運営するに至らなかった場合のいずれにおいても、
自治体がそれまでにかけた莫大な費用のほぼすべてが無駄になり、住民には損害だけが残るという重大なリスクがある。
また、多額の費用をかけて関与する民間事業者も莫大な損失を被ることになる。

 このように、自治体間及び民間事業者間で、カジノ誘致をめぐる死闘が繰り広げられることになるにもかかわらず、
今回のカジノ解禁推進法案には、カジノ設置区域の選定基準や評価要素は一切規定されていないのである。
今後、決まってもいない選定基準や評価要素をめぐって、さまざまな憶測や不確かな情報などが流れ、
悪質なブローカーやコンサルタントなどが跋扈する恐れもある。巨大な利権が絡むだけに、
死人が出る可能性すらあるのではないかと筆者は懸念している。

続きます
4のーみそとろとろφ ★:2013/12/07(土) 02:57:14.49 ID:???
>>3より

 そのような事態を防ぎ、できるだけ公明正大なプロセスでカジノ設置区域を選定するために、
今回提出されるカジノ解禁推進法案を国会で修正し、
ある程度の具体性をもった選定基準や評価要素を条項に盛り込むことを検討すべきである
(法案を事前審査した衆議院法制局も、その趣旨の意見を述べたとのことである)。
カジノ設置区域の選定が合理的であったかどうかについて、事後に客観的な検証を可能とするためにも、
少なくとも、カジノ解禁実施法案には絶対に選定基準を規定すべきである。
細目的・技術的事項は別として、選定基準を法律に規定せず、
例えば、閣議決定だけによるとか、法規の性質を持たない「要綱」や「ガイドライン」などで規定するというのは、
法治国家としておよそあり得ない選択肢である。
●選定・評価機関の人選の客観中立性の重要さ

 どのような機関がカジノ設置区域の選定や評価を行うかについても、カジノ解禁推進法案には一切規定されていない。
カジノ解禁実施法において規定されることになるのであろうが、その機関の人選は極めて重要である。
端的にいって、カジノは巨大な利権を内包する。筆者は、そのこと自体を否定的に捉えはしないが、
カジノをめぐる法制度は、国民に重大な影響を与えるがゆえに、不当に歪められることがあってはならない。
カジノ設置区域の選定基準の策定や評価を行う機関から、利害関係者を徹底的に排除し、客観中立的な運営を図る必要がある。

 カジノ解禁推進法案においては、
「特定複合観光施設区域(カジノ設置区域)の整備の推進のために講ぜられる施策に係る重要事項について調査審議し、
本部長(内閣総理大臣)に意見を述べる」機関として、「特定複合観光施設区域整備推進会議」を設け、
内閣総理大臣が任命する学識経験者20人以内で組織すると規定されている。
この「推進会議」の人選も極めて重要であり、カジノ法制を利権によって不当に歪めるおそれのある人物が入り込まないか、
国民及びメディアは注視する必要がある。
国民が重大な関心を持ち続けなければ、カジノ制度は、利権関係者によって私物化する恐れが高い。
そうなれば、国民にカジノ施設の収益が還元されないばかりか、カジノ解禁による社会的コストだけを一方的に押しつけられることなる。

●負の影響への手当ても一切具体規定なし
 カジノを解禁した場合に想定されている「デメリット」(負の影響)として、反社会的勢力の関与、
犯罪発生、風俗環境の悪化、過剰な広告宣伝、青少年の健全育成への悪影響、
依存症、多重債務者の発生、ゲームの不公正、チップその他の金銭の代替物の不適正な利用などがあげられるが、
カジノ解禁推進法案は、これらの負の影響への具体的手当てについても一切規定していない。
単に、「政府は、必要な措置を講ずるものとする」とか、
「別に法律で定めるところにより、規制を行うものとする」とか書かれているだけである。

続きます
5のーみそとろとろφ ★:2013/12/07(土) 02:57:25.14 ID:???
>>4より
 このように負の影響への具体的手当てが一切規定されていないにもかかわらず、
カジノを解禁するという結論のみを先に決めるという手法で、国民の根強い懸念が払拭されるのか疑問である。
カジノ解禁の負の影響への手当てについても、ある程度は条項に盛り込むべく、国会における法案の修正も検討すべきであろう。

 ちなみにカジノ議連は、カジノ解禁推進法案とともに、
「特定複合観光施設区域整備法案(仮称)〜IR実施法案〜に関する基本的な考え方」と題する文書を発表している。
そこでは、例えば、カジノにまつわる犯罪につき査察官制度を設け、逮捕特権を保持するなどと書かれている。
しかし、これは、後のカジノ解禁実施法案の内容についての、
議連としての単なるアイディア(議連が現時点で描いているイメージ)あるいは論点出しにすぎず、法的拘束力をなんら有しない。
従って、実施法案(議員立法ではなく、内閣提出による閣法を想定)において
そのようなことが実際に規定されるかどうかは全く別の話である。
また、「基本的な考え方」には、カジノ設置区域については、「大都市型」と
「地方型」の二類型が構想されることが望ましいとも書かれているが、
これも、単なる議連としてのアイディアにすぎず、そのような二類型に分けて選定基準が策定されるかどうかは全く決まっていないし、
カジノ解禁推進法案にも規定されていない。
●徹底した審議が必要

 筆者は、法律によって「賭博に関連する公正な社会秩序」(カジノ解禁の実質的な正当化根拠)を確保でき、
かつ、国民が(十分な情報を提供された上での)熟議の結果、
総体として、メリット(雇用増、税収増、財政改善、観光振興、国際的大規模会議誘致、新たな文化の発信など)が
デメリット(依存症患者や多重債務者発生のおそれ、勤労の美風への影響など)を上回ると判断したならば、
カジノを解禁してもよいと考えている。

 しかし、現状のカジノ解禁推進法案のみを前提とすると、「
賭博に関連する公正な社会秩序」を確保できるかどうかは不透明であり、白紙委任に近い状態で、
カジノを解禁するという結論だけを先に決めることになりかねない。
例えるなら、具体的な内容の契約書もなく、どのような構造やデザインの建物が建つかわからないのに、
先に高いお金を払って、とにかく巨大な建物の建築を業者に発注するような状態である。

 よって、国会における徹底審議を強く求めたい。議連が発表している上述の「特定複合観光施設区域整備法案」は、
(カジノを民営で解禁するという前提に立つならば)概ね合理的な内容となっている。
そこで、この一部について、国民との約束事として法的拘束力を持たせ、国民の懸念を払拭するべく、
カジノ解禁推進法の条項に盛り込むことを検討してもよいのではないか。民営賭博を特別法で解禁するのは、
我が国初の法制であるので、高い法技術性・専門性が求められる立法作業ではあるが、
しかるべき法律専門家が関与すれば、十分に可能である。
(文=山脇康嗣/弁護士)

以上です。