米連邦政府が実施している作物保険制度への批判が強まっている。
農家の所得が高水準で推移するなか、保険料への政府補助金は急増。納税者の負担で
農家がますます裕福になる構図が生まれているためだ。
歳出削減強硬派の共和党有力議員のほかオバマ大統領も予算削減を求めているが、
業界の強力なロビー活動により予定されている農業法改正では逆に支出が増える
見通しだ。
作物保険制度は自然災害による農家の損失を軽減するためのもので、その歴史は
中西部が「ダストボウル」と呼ばれる砂嵐に断続的に見舞われた1930年代まで
遡(さかのぼ)る。農家が民間の保険会社に支払う保険料などに対し、政府が補助金を
提供する仕組みだ。2012年には全米で収穫されたトウモロコシ、大豆、綿花、
小麦のほぼすべてを含む、約1170億ドル(約11兆5600億円)相当の穀物が
カバーされている。
ただ、ここへきて政府の負担が重くなっている。
米議会調査局によれば、同制度の下で農務省が12年度、農家の作物や収入の
損失補填(ほてん)に支払った額は約140億ドルと、00年度比で7倍近くに
急増した。議会が00年に保険料への補助金を手厚くしていたことに加え、12年は
国内が記録的な干魃(かんばつ)に襲われたことなどが背景とみられる。
現在、農家の保険料負担率は38%ほどで、補助金の支給額に上限はない。
全米の農家所得は地価の上昇と輸出の急増によって過去4年で倍増しており、
13年は1200億ドル超とインフレ調整後で1973年以来最大となる見込み。
世帯当たりの平均所得を見ても2011年に8万4649ドルと、一般世帯より
7割近くも高い。
一方、承認を受けた保険18社への支払額も12年度に14億ドルに上る。
裕福な農家や保険会社が納税者の負担で潤っている格好だ。
作物保険制度をめぐっては、収穫できない可能性がある土地など、リスクの高い
農地での作付けを農家に助長したり、補助金の詐取などの不正の温床となりやすい
といった問題も指摘されている。モンタナ州立大学のヴィンセント・スミス教授
(農業経済学)らは同制度について、災害保護から一種の所得補助制度に変質している
と批判する。
オバマ大統領は14年度の予算教書で、同制度について10年間で117億ドルを
削減するよう要請。
野党・共和党のライアン下院予算委員長も「クローニー・キャピタリズム
(身内資本主義)」だと攻撃し、支出削減を求めている。
しかし、両氏とも農業界や保険業界のロビー団体の前に圧倒されているのが実情。
農業法の改正法案では年50億ドル規模の農家への直接支払い(所得補償)を廃止する
代わりに作物保険を拡充する方向となっている。
(ブルームバーグ David J.Lynch、Alan Bjerga)
ソースは
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/130917/mcb1309170601011-n1.htm http://www.sankeibiz.jp/macro/news/130917/mcb1309170601011-n2.htm