動き出したJR東海のリニア新型車両新幹線を書いていて思い出しました。今はそれほど
でもないかもしれませんが、分割民営化によりJRが発足した当時、JR東日本とJR東海の間は
大変な仲が悪いものがありました。
筆者は1989年に新聞社に辞表を出した後、IR(投資家向け広報)の業界に入りました。
それまでさまざまな企業を取材し、原稿を書いてきた経験がアニュアルレポート(企業の
経営年次報告書、主に英文)の作成に生かすことができると思ったからです。そこで
初めて作成に携わったのがJR東日本にとっても初めてのアニュアルレポートでしたが、
この時、JR東日本の担当者がJR東海の担当者と情報交換するどころか、お互いに没交渉で
極めて仲が悪いことを知ってびっくりしました。
JR東日本の英文社名は「JR East」ですが、東日本のIR担当者はJR東海の英文社名である
「JR Central」が気に入らないようでした。
というのも、英文のアニュアルレポートはJRの場合、欧州市場での資金調達の際に使用され
ますが、「東海のほうが企業規模は東日本に比べて小さいくせに“中央”という名称を使って
いるのは、実情を知らない欧州の投資家に誤解を与えている」というのが理由でした。
■東海と東の喧嘩
もとは国鉄という一つの会社でそこから分割されたJR東日本とJR東海という兄弟会社が喧嘩を
していることは、筆者の体験からだけでなく、実際にもっと大きな問題でも、最近まで続いて
います。特に東海は鉄道収入の85%を東海道新幹線に依存しているため、新幹線問題には必死で、
だいたい喧嘩のきっかけは東海の方にあるようです。
例えば東海道新幹線の品川新駅建設のために「JR東日本の土地を譲れ」というJR東海の要求は
東日本にとっては「自分たちの懐に手を突っ込む無法者」のように感じていたようです。この
問題が起きた時、JR東日本側は、一番関係の深いJR東日本に直接、頭を下げて話し合わず、
当時の運輸省に直接、話を持ち込んで政治問題化したことに腹を立てて、騒ぎとなりました。
ビール業界を始め、シェア争いの厳しい業界では関係会社を含め、ライバル会社の商品は
絶対に利用しないという話を聞きますが、JR東日本と、JR東海の場合は国鉄の分割民営化と
いう歴史を引きずっているため、喧嘩も根深いものがあるのかもしれません。
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https://kmonos.jp/csr/2013/09/img/c009-1.jpg ◎JR東日本(9020)
http://www.jreast.co.jp/ ◎JR東海(9022)
http://jr-central.co.jp/ ◎
https://kmonos.jp/csr/2013/09/c009.html