家電量販店第2位のエディオンと、住宅設備最大手のLIXIL(リクシル)グループが資本
・業務提携する。予想通り、市場筋の反応は騒々しかった。
エディオンは9月11日付でリクシルを相手に約49億9000万円の第三者割当増資を行い、
リクシルは発行済み株式の8%を保有する筆頭株主に躍り出ることになる。ところが
リクシルはM&Aに貪欲な会社とあって「これでエディオンの経営権奪取に王手が掛かった」
と、早々に“株価押し上げ”の反応を示したのだ。
業界最大手のヤマダ電機が住宅メーカーのエス・バイ・エルを買収し、家電量販店と
住宅産業の関係が深まっていることもあって、エディオンはリクシルの野心を気にする
素振りもない。実際、エディオンは最近、住宅リフォーム事業を強化している。
そこでリクシルとの提携を機に同社から人材を受け入れ、トイレやシステムキッチンなどの
リクシル商品の販売を充実させる他、住宅設備の共同開発を行う。結果、2016年3月期には
リフォーム事業の売上高を今年3月期比4.7倍の582億円に引き上げる、とバラ色のビジョンを
掲げている。
しかし、市場関係者は「甘い」と斬って捨てる。
「最初から野心をギラギラさせたら相手が敬遠する。だから8%出資で外堀を埋めた後、
一気に本丸を攻め落とす。父親譲りのシタタカな戦略家で知られる潮田洋一郎会長とすれば
『飛んで火に入る何とやら』というのが偽らざる心境でしょう」
リクシルのルーツはトーヨーサッシ(トステム)、東洋エクステリアで、創業者は故・潮田健次郎氏。
その長男がリクシル会長の洋一郎氏で、グループの総帥に就いて以来、サンウエーブ工業(システム
キッチン)、新日軽(アルミサッシ)などを買収した辣腕家として知られる。
2年前にはトステム、INAX、サンウエーブ、新日軽などのグループ企業を統合し、それまでの
住生活グループからリクシルに社名を変更した。その直前には宣伝効果を狙ってプロ野球『横浜
ベイスターズ』(当時)の買収に名乗り出たが、売主だったTBSが横浜からの本拠地移転に難色を
示したことから商談がご破算になっている。
その後もM&Aに賭ける潮田会長の執念はハンパではなく、2年前の秋には600億円を投じて
世界最大のカーテンウォールメーカーであるベルマスティリーザを買収した。この8月には
米国の衛生陶器、浴槽メーカー、アメリカンスタンダードを530億円で買収するなどM&A攻勢は
止まらない。
「まだ正式な要請はない」(関係者)とはいえ、経営再建中のシャープが出資依頼を検討中との
情報も飛び交っている。かつてはスーパーのダイエー、今はイオンが“ダボハゼ”の異名を取るが、
それでもリクシルには遠く及ばない。年間売上高の目標は今年3月期比倍増の3兆円を掲げており、
御曹司も「グローバル企業になるにはM&Aが早道」と公言して憚らない。
そのリクシルがドブ銭覚悟でエディオンに出資するわけがない。逆に言えば、エディオンが
乗っ取られるのを覚悟で同社を駆け込み寺にした事情があったということ−−。(※続く)
◎
http://wjn.jp/article/detail/3720184/ >>1の続き
「今年の夏は猛暑の影響でエアコンの販売が伸びるなど、瞬間的な追い風が吹いたとはいえ、
地デジ移行や家電エコポイントによる需要先取りの反動で家電量販店の生存競争は熾烈になって
いる。去年あたりから『いよいよ再編の大嵐が吹き荒れる』と囁かれ、業界トップのヤマダ電機
でさえ危機感をあらわにしていた。寄せ集め軍団で営業基盤の弱いエディオンに至っては『M&A
の標的になりかねない』と危惧する声が渦巻いていたのです」(担当記者)
エディオンは中国地方が地盤のデオデオ、中部地方が地盤のエイデン、さらには関西地盤の
ミドリ電化、東京・秋葉原の石丸電気など、地場の家電販売会社が統合した会社。そのルーツ
から“弱者連合”の色彩が濃い。
「一時、エディオンはビックカメラと統合交渉を進めたのですが、結局は破談に終わった。
ビックに統合後の主導権を握られることを、デオデオ創業一族でもある久保允誉社長が警戒した
ことが大きいとされています」(情報筋)
そのエディオンが、今度は野心満々のリクシルに擦り寄った。両社は従来から商品仕入れで
関係があったとはいえ、唐突感は拭えない。見方を変えれば「この期に及んで同業とは組めない
以上、住宅リフォームでのタッグマッチを錦の御旗にせざるを得ない」(同)ということだろう。
単独では生き残れない家電量販店。今後もドロドロとした“カップル誕生劇”が見られるに違いない。
◎LIXILグループ(5938)
http://www.lixil-group.co.jp/ ◎エディオン(2730)
http://www.edion.com/