就業規則、福利厚生、給与…。サラリーマン生活の重要な要素は各種制度で、会社選びの大きなポイントでもある。
会社側が定めて労働組合などに諮るのが通常なのだが、従業員たちの合議で最適な制度を探る会社が、
医療関連サービスを手がける協同病理(神戸市西区)。
政府の提唱に先立って育児休業3年を導入、パートタイマーと正社員の切り替え自由…。
社員20人という小規模ながら、これまで作り出してきた制度は時代の先をいくユニークさ。
現代版“寄り合い”が生み出す活力とは。
取締役会と“同等”
「育休中の社員の仕事をカバーしている。人事評価に反映させるべきか」「物品管理や清掃も、日々の業務推進に不可欠。
縁の下の力持ち的な仕事を担当する人にも目を向けたい」。
協同病理の会議室では、社内制度を検討するプロジェクトチーム(PT)が白熱した議論を交わしていた。
今年度のテーマは人事評価制度。PTメンバーが職場や仕事の実態をもとに、意見を持ち寄る。
「制度設計に関わることが魅力。後輩たちがより働きやすい環境をつくりたい」とメンバーの西田美穂さん(29)は話す。
PTは経営の意思決定や予算など、経営の根幹事項に関わること以外に取り組む権限をもつ。
これまで、育休3年への拡大▽フルタイム勤務が難しい場合の短時間勤務の正社員制度
▽パート、短時間勤務の正社員を適宜選択できる制度−などをつくってきた。就業規則を変更したこともある。
チームは社内に課題ができるたびに創設され、メンバーは公募。
「当社にとって取締役会、株主総会のようなもの」と小川隆文社長(61)は話す
。社長はチームに入れず、議論の最終報告を決裁する役割だ。
初の育休きっかけに
同社が合議制システムを導入したのは平成17年。きっかけは女性社員の出産だった。
6年の会社設立以来、初めて育休を取得する女性社員で、この社員には祖父母など子供の世話を任せられる人が近所におらず、
育児と仕事の両立に頭を悩ませていた。
「みんなでいい方法を考えてみよう」。小川社長の呼びかけがPT発足の契機になった。
チーム参加者を呼びかけたところ、若手女性社員2人が応じた。
公募は管理職を除外する形を取った。「子育てが終わった世代では、必要な制度は分からない。
これから子育てを迎える世代の視点が欲しかった」からだ。
自主性引き出す
こうして3年育休などの改革が行われたが、新たな問題も起こった。わずか20人の所帯。
育休の穴は他の社員がカバーしなければならない。
「仕事のカバーはどう評価されるのか」
「育休だけでなく、介護や大学院進学のための休業があってもいいのでは」などさまざまな意見が出始めた。
今年度発足のPTは人事評価、給与体系の見直しに踏み込む。育児と仕事の両立からスタートした合議制度は、
会社の根幹の制度改革にも関わり始めている。
続きます
>>2-3 http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/130811/wec13081107000000-n1.htm >>1より
各人が主張を始めると収拾がつかなくなるのでは…とも思えるが、
今年度のメンバーの山口洋嗣さん(29)は「不満を抱えたままはよくない。
何が納得できないか、考え方を聞き、ときには第三者の意見も聞いて折れるべきところは折れる。
伝え合うことが不満解決の糸口」と話す。
合議制は、社員の自主性も促している。
会社設立10年目で導入したPTは「10年も経てば、組織は1台の機関車(社長)で引っ張るだけではだめ。
全車両に動力が必要」(小川社長)という課題を解決している。
「みんなで決めたことなら納得でき、不具合があれば直せばいい。実は、合議制が一番合理的なのです」
「みんなで決める」文化は、さらに発展。社員採用は全社員で面接し合議で選考。
採用計画や募集要件も社員が決めるなど、会社の重要な意思決定にも参画している。
「みんな」でやることで、逆に1人1人の自主性を高める。合議制の取り組みは好循環を作りあげているようだ。(内山智彦)
以上です。