エコエネルギー振興の切り札として、大阪でEV(電気自動車)タクシーが導入されたのは
2011年2月のこと。
「新エネルギー関連産業を育てようと、府が日産自動車、タクシー会社約30社の協力を得て
50台のEVタクシー(日産のリーフ)を導入しました。1台につき府から100万円、
国から78万円の補助金が出るため、タクシー会社は1台のEVタクシーを割安価格の
200万円で導入できました」(大阪府・新エネルギー産業課)
タクシー業界の期待も大だった。
「何しろ運転していて疲れない。揺れ、ノッキングがなく、滑るように走る。電気代も
ガソリン代よりはるかに安くて済むし、故障も少ない。将来はEVタクシーが主流となる
のは間違いない」(大阪市内のあるタクシー会社)
そんな評判を聞きつけてか、JR大阪駅に隣接するデパート脇に設けられたEVタクシー
専用乗り場には、乗客が連日、行列をつくったものだった。
あれから丸2年。福島第一原発での事故もあって、新エネルギーへの期待はますます
高まっている。このEVタクシーの人気もさらに沸騰しているはずと思っていたら……
あれれ? 乗り場が閑散としている。以前なら20台以上のEVタクシーが列をつくって
いたのに、今はポツリと1台きり。順番待ちの客はゼロだ。
いったい、どういうこと? 1台きりのEVタクシーに乗り込み、運転手にワケを聞いてみた。
「あきまへん。さっぱりですわ。売り上げも普通のタクシーの半分以下。とてもじゃないけど、
EVタクシーは商売になりません」
なんと、鳴り物入りでデビューしたのに、わずか2年でEVタクシーの評価はガタ落ちして
いたのだ。その運転手が続ける。
「とにかく電池の劣化が激しい。新車時は1回の充電で100km以上走行できたのに、
2年後の今はわずか50kmほど。そのため長距離の客は断らざるを得ない。これでは
売り上げが上がりません」
省エネ仕様のガソリン車だと、リッター当たり25kmくらいは走る。ということは、
このEVタクシーは2リットルしか入らないガソリン車と同じってこと? それじゃ、
まともな営業ができるはずがない。
電池劣化とともに、急速充電にかかる時間も増えた。電池容量半分の充電で約15分から
約40分と、倍以上になってしまったとか。
「しかも、頼りの急速充電スタンドは大阪市内に8ヵ所しかない。そこまでの所要時間を
足すと、充電に1時間以上もかかってしまう。充電は一日に6、7回は必要なので、
それだけで計7時間近い時間がロスとなる。やってられませんよ」(運転手)
その車内を見渡すと、運転席周辺に使い捨てカイロがゴロゴロ。(※続く)
●JR大阪駅近くの急速充電スタンド。
運転手は「充電池が劣化して、充電に要する時間は以前の倍」とボヤく
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