企業が新興国のNGO(非政府組織)に社員を派遣し、貧困解消などを支援する「留職」が広がりをみせている。
異文化を理解し、困難な状況を打開できる人材の育成や、成長する新興国の市場調査が企業側の狙いだ。
パナソニックがすでに実施し、医療機器大手のテルモやNEC、ベネッセホールディングスも今秋以降、始める方針だ。
国内市場の縮小で新興国の需要取り込みが企業の重要課題。派遣先は、カンボジアやインドネシアなどアジア各国を予定している。
企業と新興国のニーズを結び付ける「留職」を企画したのはNPO法人(特定非営利活動法人)クロスフィールズ(東京)。
小沼大地代表理事(30)と松島由佳副代表(27)が共同設立者で、企業がNGOなどにボランティアとして社員を派遣することを「留職」と名付けた。
パナソニックは今年2月、研究職の山本尚明さん(34)をベトナムに約1カ月間、留職させた。
派遣先は太陽光を利用した調理器を製造し、貧困層に寄付する現地のNGO。
ベトナム人スタッフのリーダーとして調理器製造の改善に取り組み、費用を約13%削減し、
製造期間も7日から5.5日に短縮した。
山本さんは「現地の仲間やパナソニックのさまざまな職場の社員と力を合わせ、目標を達成する経験は貴重だった」と振り返る。
パナソニックは「新たな顧客層の暮らしぶりが分かった」と効果を説明。
山本さんの活躍を知って「やりがいがある」と若手社員の留職希望者が相次いでいるという。
小沼さんは「海外で学ぶ留学より、現地に溶け込み職務を果たす『留職』の方が人を成長させる」と説明する。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/120906/bsg1209060504011-n1.htm