【コラム】インフレのある暮らし - 15年ぶりの1ドル80円時代に思うこと [12/08/16]

このエントリーをはてなブックマークに追加
456名刺は切らしておりまして
<<製造業と円高を語る上での基礎知識 2>>

では具体的にどのようにして現在の異常な為替レートを是正すべきだろうか?
今年初めの円安進行局面について、市場関係者への調査からその点を見てみよう。
http://money.quick.co.jp/kabu/qss/1203.html

●最近の円安傾向における最大の要因 → 『日銀の追加金融緩和』が52%と約半数。
●国内株価上昇要因 → 『円安の進行』が34%、『日銀の追加金融緩和』が16%とこれも合わせて半数。

ここでの『日銀の追加金融緩和』とは、2012年2月に公表された日銀の緩和策であり、
具体的には長期国債の10兆円買い増し、および1%のインフレ率という目安を掲げたもの。
日銀は金融市場から金融資産を買い増すことで、金融市場ひいては市場全体へとマネーを供給する。
マネーが国債へ向かうことにより、国債金利の低下が生じ円安を引き起こすと考えられる。

また国債購入によるマネーの増加は将来のインフレ要因ともなりうるが、
これと同時に日銀がインフレ率1%を許容するというシグナルを発したことも、円安を促した要因であろう。
通貨の価値はその購買力によって左右されるので、インフレによる購買力低下は円安へと帰結する。
そこで将来のインフレ、あるいはデフレ懸念の後退が予想されると、将来満期を迎える債券等を
現時点で投資家らが手放す動きが生まれ、それによって足元の円安が進行するのである。

過去、日銀は景気やインフレ率が十分に回復する前に、利上げなどデフレ政策に
舵を切ることが常だったが、『こうした政策は今後取りません』と公に宣伝し、その裏づけとして
マネーの供給を増やすことで、デフレを予想する金融市場の懸念を打ち払い、円安と株高を引き起こしたのである。

ちなみにこうしたインフレ率の目標と、日本国債の購入をメニューとした円安誘導策であれば、
為替介入という一般に他国からの受けが悪く、また効果も実はさほど長持ちしない政策と異なり、
政治的反発や揺り戻しも生じにくい点も注目されるべきであろう。
とはいえ為替介入が完全に否定されるかというとそうでもない。オプションとして検討には値する。

円相場は「大幅に過大評価」 IMF年次審査報告書、日本の介入に理解
http://www.sankeibiz.jp/business/news/120803/bse1208030503004-n1.htm