ここ数年、中部・東海地方を中心に寝たきり高齢者(医療的ニーズを伴う要介護者)を
専門に受け入れる有料老人ホーム・ビジネスが増えつつある。法律上は「住宅型有料
老人ホーム」に位置づけられる。
私は、以前この介護施設に入所していた高齢者の後見人に話を聞いた。前任の後見人が
入所に関わり、既に入所していた段階でこの後見人が担当を引き継いだそうだ。現在も
この有料老人ホームのパンフレットには、「経管栄養」「人工呼吸器管理」「在宅酸素」
「吸引の必要な方」を専門に受入れ、「食事介助の必要な方は入居をお断りします」
という内容が記載されていた。
しかも、施設側としては、意思能力が不充分な認知症等の高齢者を積極的に受け入れて
いるという。認知症高齢者だと、あまり施設へのクレームも起こさないと考えられている
ためだ。なお、毎月の費用負担は約13万円程度である。この金額だと生活保護受給者も
入所できる。
重い要介護者のほうが軽度者よりもケアが大変だと思いがちだが、むしろ寝たきりで
管による栄養補給が必要な要介護者ばかりのほうが、一般の介護施設よりも介護労働の
負荷が少なくて済む。しかも、有料老人ホームは訪問看護やヘルパーといった外部の
介護保険サービスも活用できるため、近隣に系列の在宅介護事業所を開設して入所者を
ターゲットに多角的ビジネスが展開できる。
なお、同じく近隣にある特別養護老人ホームの看護師に話を聞いたのだが、最近、類似
した有料老人ホームから要介護高齢者を受け入れたという。本人は動けないとはいえ、
寝かせられたままで天井ばかりを見ている生活に耐えられず、家族に懇願してようやく
特養ホームに入所できたというのである。
このような介護ビジネスは法律的上問題ないかもしれないが、介護事業所としての
モラルから考えると大きな問題であろう。しかし、公的な介護施設等が不充分では
モラル的に問題があっても家族等は利用せざるをえない。いわば介護現場の隙間に
新ビジネスが展開されているといえる。
◎執筆者/結城康博
淑徳大学准教授(社会福祉士・介護福祉士・ケアマネジャー)
?長年、福祉現場で勤務して、研究者へ転身しました。主に、介護・医療について
研究しています。介護・医療現場の問題点をみなさんで語りましょう! ?
?淑徳大学社会福祉学部社会福祉学科卒業
法?政大学大学院修士課程修了(経済学修士)
?法政大学大学院博士課程修了(政治学博士)
◎
http://blogs.yahoo.co.jp/yyyyyasujp/52811041.html