ソースは
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20120607/ecn1206070744002-n1.htm 6月は、多くの企業で夏のボーナス月だ。
新聞・雑誌などのメディアでは、マネー運用に関する記事が増える。広告と銘打つ場合もあるし、
広告と表示しない事もある。
個別の雑誌や運用会社の商売の邪魔をする意図はないので、名前は挙げないが、先週発売された
ある週刊誌に、これはまずいと思う記事を見つけた。富裕層のお金の運用について書かれた短期連載。
記事の出だし近くの文で日本の国債格付けの引き下げについて触れた後に、
「“情報強者”である富裕層はこうした流れに敏感だ」とあるのが、まず怪しい文章だ。
富裕層がこっそりうまい資産防衛対策をとっているかのような書きぶりだが、
これは富裕層ないしその予備軍の飢餓感を煽(あお)る典型的な釣り文句。
金融業界にとって富裕者は、単に「大柄なカモ」ということにすぎない。
肝心なのは、大きな金額で相当程度確実に儲かる機会があれば、金融業者が自分で儲けるはずで、
顧客にセールスなどしないということだ。これは、国の内外を問わない大人の「経済常識」だ。
この記事では、銀行預金にお金を置いていてはまずいというために、
「しかし、“円安、インフレ、金利上昇”となると、そうはいかない」と読者を脅すのだが、
目下現実の日本は、長短共に低金利だし、デフレと円高が悩みの種。
国債暴落、インフレなどの可能性は、何年も前からしきりに言われているが、
「次はインフレ&円安」と決めつけて、外国資産に投資した人々が今どれくらい損をしているか、
為替レートを見て想像してほしい。
将来とも「絶対大丈夫」などと言うつもりはないが、インフレにしても、円安にしても、
将来を一方向に決めつけてお金を投じるのは愚かだ。
危機感を煽って、セレブの真似をしましょう、と誘うのは、健康食品や、霊感の壺のような、
粗利の大きな悪徳商品を売る際の常套(じょうとう)手段。
もっとも、この記事がダメだと言ったり勧めたりしている運用対象が全てダメかというと、
必ずしもそうではない。日本の毎月分配型の投資信託は手数料が高すぎてダメだと書いてあるのは
その通りだし、外国には日本よりも手数料の安い「ましな」投資信託がある。
だが、その後に勧めている、海外不動産投資やプライベートバンク、ヘッジファンドなどは、
やめた方がいい。「ヘッジファンドは市場動向と関係なく絶対リターンを追求しているので、
選び方によっては年利10%も夢ではありません」などという台詞(せりふ)に興奮してはいけない。
「選び方によっては」とは「運が良ければ」の言い換えにすぎない。
資産防衛の心得を一つお教えしよう。
運用金額の大小を問わず、実質的に年率1%以上の手数料を払う商品は避けた方がいい。
例外はない。
■山崎元(やまざき・はじめ) 経済評論家。1958年北海道生まれ。
東大経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一証券、UFJ総研
など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。
-以上です-