(2012年5月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
欧州連合(EU)の独禁当局は21日、米グーグルに対し不公正競争を是正しなければ高額の罰金を科すと迫り、
事実上の最後通告を突きつけた。10年前に米マイクロソフト(MS)を提訴して以来の欧米間の重大な紛争案件となりそうだ。
■売り上げの10%の罰金や法廷闘争も
グーグルは欧州委員会の主張を不当としているが、
突き付けられた問題に対処するために指摘された事業を自主的に是正するかどうかを
「数週間以内に」決断しなくてはならない。
かりに譲歩せず欧州委員会との和解を拒めば、
同社の世界全体の売り上げの最大10%にあたる罰金を科され、
MSのように何年にも及ぶ法廷闘争に発展する恐れがある。
グーグルが二者択一を迫られたことは、アルムニア欧州副委員長(競争政策担当)によって明らかにされた。
同氏はこれまでの慣例を破り、和解協議入りを公表し、1年半余の調査にもとづく結論を示した。
同氏はグーグルの事業でEU競争法(独占禁止法)違反となる可能性があるものとして、
ライバル企業の許可を得ずにコンテンツを「コピー」している点、
他のサイトとの広告契約で競争相手を締め出している点、
広告主がライバル社の検索エンジンでオンライン広告を打つことを制限している点などを挙げた。
アルムニア氏は「グーグルがこの機会を生かし当方の懸念に早急に対処するよう望む」とした上で、
競争上の問題が「素早く解決」されれば、ウェブ検索のような「動きの速い市場」が受ける恩恵は大きいと述べた。
■交渉が数カ月にわたる可能性
グーグルは指摘を受けた諸問題については、かねてから欧州委員会との協議を求めていた。
同社が譲歩案を示すのは数週間先だが、協議の行方によっては交渉が数カ月に及ぶ可能性がある。
アルムニア副委員長はグーグルが誠意ある明確な解決案を提示しなければ提訴も辞さずとの強い姿勢をみせている。
一方、グーグルは「独禁当局の主張を本格的に検討するのはこれからだ。
結論には同意できないが、いかなる懸念についても積極的に議論に応じる」と述べ、
「欧州委員会がこの点に目を向けて以来この2年間で、
検索サービスの競争は飛躍的に激化しており、グーグルに対する圧力もすさまじい」と語った。
欧州委員会は過去の競争法違反のケースでは、正式な罪状を明らかにする前に和解を結んでおり、協議は非公式で公開されなかった。
アルムニア副委員長がグーグルとの和解交渉入りを発表したのは大型の競争法違反案件では初めてであり、
利害対立の大きさを示唆するものだ。
MSや旅行口コミサイトの米トリップアドバイザー、
ネット旅行予約最大手の米エクスペディアなど様々なライバル企業から欧州委員会に寄せられたグーグルに対する苦情件数は約17件に上る。
異議を申し立てた各社はアルムニア副委員長の今回の決断を歓迎したものの、
グーグルが事業モデルの是正に積極的に取り組むかについては疑念を示している。
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819584E0E0E2E2E38DE0E0E2E7E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2