京都大は、神経や心筋などiPS細胞(新型万能細胞)から変化させた細胞を使って、
京大側と契約していない研究機関や企業が行う研究開発にも権利が及ぶ米国特許を取得した。
作製から使用まで網羅的に保護される特許は国外初。iPS細胞から作られる細胞は創薬研究での利用が広がっており、
世界最大の医薬品市場を抱える米国で京大の影響力が一層強まることになった。
iPS細胞は京大の山中伸弥教授らが開発した。
今回の特許は
〈1〉「山中因子」と呼ばれる4種類の遺伝子か、そのうちの3種類を特殊なウイルスを使って皮膚などの細胞に組み込みiPS細胞を作る
〈2〉そこから別の細胞に変化させる
〈3〉できた細胞を使用して様々な研究開発をする――という一連の過程が対象。
米国特許は今回で3件目。これまで「別の細胞に変化させる」ところまでは権利が及んでいたが、
「できた細胞」を、他の企業や研究機関が譲り受けて使用する場合は規制できなかった。
今後は、こうした細胞を企業などが創薬研究に利用したり、販売したりする際、京大の許可が必要になる。
特許の有効期限は、2026年12月。
iPS細胞から作られた心筋や肝臓などの細胞はすでに新薬候補の安全性を確かめる試験で活用されている。
希少難病患者らのiPS細胞から神経や骨、腎臓などの細胞を作って病気の状態を細胞レベルで再現し、
発症原因や治療薬を追究する研究も盛んだ。
京大iPS細胞研究所の高須直子・知財契約管理室長は「米国での最重要課題だった特許が全てそろった。
欧州などでも認められるよう努力したい」と話している。
(2012年5月11日 読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=58633