在宅医療を手掛ける九州の医療機関で、
ネットワーク経由で情報システムを利用する「クラウドコンピューティング」を活用した情報共有が拡大している。
訪問診療する看護師やケアマネジャーらに多機能携帯端末(タブレット)を供与、病院外でも患者情報を共有する。
従来は電話やファクスでやり取りしていたが、きめ細かく連携できる仕組みを整え、在宅医療の質を高める狙いだ。
北九州市と小倉医師会は5月下旬をめどに、
ソフト開発ベンチャーのエイル(福岡市、片山嘉国社長)が開発した在宅医療・介護向けのクラウドシステムを導入。
透析などの治療を受ける患者の情報を13機関の医師や看護師、ケアマネジャーらが共有できるようにする。
看護師らには米アップルのタブレット「iPad(アイパッド)」を供与。関係者は患者の状態や点滴などの医療行為、
治療計画、薬の副作用の報告などについて場所や時間を問わずいつでも閲覧、書き込みができる。
北九州市は「在宅医療のチームワーク向上や効率化につながる可能性が高い」(地域医療課)としている。
如月クリニック(福岡県太宰府市)は2月、高齢者施設での訪問診療の情報管理にクラウドを採用。
それまでは文書をコピーして回覧するなどしていたが、
スマートフォン(高機能携帯電話)やiPad計5台を医師、看護師に供与し診療記録の共有を始めた。
ファミリークリニックネリヤ(鹿児島県奄美市)はサイボウズのクラウドを利用。
医師が病院外にいても症状の変化など最新の診療記録をタブレットで把握、臨機応変に訪問時のリハビリテーションの方法を変えるなど、
「看護師やヘルパーとの間で効果的な連携が取れるようになった」(ネリヤ)という。
政府は2012年度から、特定条件を満たした在宅医療の診療報酬を大幅に引き上げるなど、
これまでの病院中心から在宅医療へのシフトを急いでいる。
病院と質の変わらぬ医療を提供するために、関係者が情報を共有するための基盤整備の重要性が高まっている。
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C889DE6E3E2E1E4EBE2E2E2E0E2E7E0E2E3E09E8AE2E2E2E2