【サンパウロ=宮本英威】
アルゼンチンのフェルナンデス大統領は16日、スペイン石油大手レプソル傘下のYPFを国有化するための法案を議会に提出すると発表した。
過半の株式を取得する意向だが、具体的な方法は明らかにしていない。
スペインや欧州は強く反発しており、アルゼンチンの国際市場での信用力低下や孤立につながる可能性がある。
法案は議会を通過するとの見方が多い。計画では政府が51%、残りの49%は州が取得するとしている。
現在YPFの株式はレプソルが57.4%、アルゼンチンの資産家一族が同25.5%を保有している。
過半の出資には50億ドル(約4000億円)の資金が必要になる可能性がある。
大統領は「(石油は)極めて重要な資源だ。(YPFが必要な)投資を怠った。
この政策が続けばこの国は生き残れない。発展できない国になる」と批判した。
現地からの報道によると、アルゼンチンでは昨年、液化天然ガス(LNG)やディーゼルといった燃料輸入が94億ドルに達し、
前年比で倍増。政権はこの一因をYPFの生産低迷や投資不足にあるとして、批判を強めていた。
フェルナンデス大統領は2007年12月の就任以来、総額300億ドル規模の年金基金、
米ロッキード・マーチンのアルゼンチン現地法人の国有化に動いてきた経緯がある。
アルゼンチン政府による買収の動きに対し、ロイター通信によると、
レプソルは「明らかに違法で、極めて差別的だ」とする声明を発表。
欧州連合(EU)欧州委員会やスペイン政府も懸念を表明している。
ニューヨーク証券取引所に上場するYPFの株価は16日に前週末から11%下落した。
アルゼンチンは01年、800億ドルを超えるデフォルト(債務不履行)に陥った。
現在も日本などのパリクラブ(主要債権国会議)関係の政府系金融機関が持つ債務については交渉を続けている。
今回の方針が、国際金融界への復帰を一層難しくする可能性もある。
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE3E5E2E3E68DE3E5E2E6E0E2E3E09790E0E2E2E2