政府や企業の機密情報を暴いて数々の騒動を巻き起こしてきた内部告発サイト、
ウィキリークスが、新たな攻撃を開始した。
今度のターゲットは米民間調査会社ストラトフォー。ウィキリークスは今週、
国際ハッカー集団「アノニマス」がストラトフォーから盗み出したという
500万通もの電子メールを順次公開しはじめた。2月27日の初回公開分には、
ストラトフォーが有名企業の依頼を受けてアメリカやカナダの活動家の動向を
探ってきた様子が克明に記されている。
公開されたメールによると、ストラットフォーはコカコーラや米化学大手の
ダウ・ケミカルとユニオンカーバイドなどの依頼を受け、反グローバル化と
反資本主義を掲げるアメリカの活動団体「イエス・メン」や動物愛護団体PETA
(動物の倫理的待遇を求める人々)の動向を監視していたという。
イエス・メンが監視対象にされたのは、1984年12月にインド中部ボパールで
農薬工場から有毒ガスが漏出し、1万人近くが死亡した悲劇について世論を喚起
しようとしていたため。この史上最悪規模の産業事故を起こした張本人が、
ユニオンカーバイドだった。
同社と後に同社を買収したダウ・ケミカルは、事故から25年の節目に再び世論の
反発が高まるかどうかを知りたかったようだ。公開されたメールには、イエス
・メンのメンバーの個人情報やメディアへの露出、ニュース媒体での扱いなどに
ついて詳細に報告されている。
ストラットフォーのバート・モンゴベン副社長が04年11月に送ったとされるメール
には、こう書かれている。「(事故から25年の式典まで)1か月を切り、主要な
プレイヤー、特に(国際人権団体)アムネスティ・インターナショナルがボパールの
事故を利用してより大きな問題を提起していると思うだろう。だが、その証拠は
見当たらない」「彼らが25周年を機により大きな問題提起ができないなら、
おそらく今後もできないだろう」
■バンクーバー五輪の妨害を恐れたコカコーラ
ウィキリークスのメール公開を受けて、イエス・メンは即座に声明を発表。自分
たちの活動がウォール街占拠運動などと同じように成功した証しだと胸を張った。
「ウォール街がウォール街占拠運動を怖れたように、今回のメール流出によって、
企業が『より大きな問題』、つまり組織的な犯罪行為に光が当たることを最も
恐れていることがわかる」
一方、コカコーラ社がストラットフォーに依頼して、カナダにおける動物愛護団体
PETAの活動を監視していたことも明らかになった。2010年のバンクーバー
冬季オリンピックのスポンサーに決まっていたコカコーラは、PETAがスポンサー
への嫌がらせや五輪期間中のイベントへの妨害行為を行う可能性を恐れて調査を
依頼したのだ。
ストラットフォーとコカコーラ社員の間を09年に飛び交ったとされるメールをみると、
コカコーラはPETAのカナダでの活動の詳細について報告を求めていたようだ。
その内容は、カナダ国内の賛同者の数、そのうち積極的な活動行為に傾倒している
人の数、アメリカ国内のPETA賛同者がカナダを訪れて活動に参加する可能性、
PETAとは無関係の活動家らがデモに参加する可能性、PETAの国境を越えた
支配体制、妨害行為を計画・実行する能力まで多岐に渡っていた。
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http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2012/02/post-2453.php