2月26日付の読売新聞に以下の見出しが躍った。
「新名神入札疑惑で清水建設社員ら自宅を捜索」
昨年6月、西日本高速道路会社(NEXCO西日本)が入札を行った新名神高速道路建設
工事を巡り、入札前に価格情報が流出していた疑いがあるとして、清水建設やNEXCO
西日本の捜査を始めた、という記事だ。
対象となっている工事は、神戸市北区道場町にある全長3kmの区間。昨年6月30日に
一般競争入札が行われたが、入札者からの提出書類に疑義が生じたとして入札手続きを
保留し、その後8月12日に入札手続きを中止していた。
報道によれば、清水建設の資料に記載された資材などの単価の一部が、NEXCO西日本の
試算と同じと判明、相談を受けた兵庫県警は情報漏洩で入札業務が妨害された可能性が
あるとみて調べていた。
今回、疑惑が発覚した「道場工事」では清水建設という具体的な社名が挙がっている。
ただ、「(清水建設は)氷山の一角ではないか」とNEXCOの関係者が語るように、
この数年のNEXCO西日本の発注を見ると、不自然な動きが相次いでいた。
例えば、新名神高速道路・箕面インターチェンジ(IC)工事。2010年8月3日に入札が
行われたこの工事も、道場工事と同様に、8月25日になって入札手続きが保留されている。
NEXCO西日本は適正契約基準価格を下回った入札者に対して、適正な理由で入札価格を
出しているのか、審査している。箕面IC工事では、適正契約基準価格を下回った業者が
複数社あったため入札審査を実施した。
ただ、入札審査の最中に「適正契約基準価格を下回った業者に入札辞退を促した」という
匿名の情報提供が寄せられたため、NEXCO西日本は調査委員会を設置、10月に「不正の
事実はなかった」という内容の声明を公表している。
■天の声が続く?
ちなみに、箕面IC工事の適正契約基準価格は約45億2290万円だったが、落札した戸田建設
の入札価格は45億2400万円と、わずか100万円ほど上回っただけだった。
こういった事例はいくつもある。戸田建設が2010年3月30日に落札した「西名阪自動車道
・郡山北IC工事」では、33億9078万円の適正契約基準価格に対して、落札価格は33億
9090万円だった。大成建設が落札した「松江自動車道・三刀屋木次IC工事、竹中土木の
「四国横断自動車道・冨久工事」、大林組の「新名神高速道路・猪淵工事」など、適正
契約基準価格と落札価格の差が2%を切っている案件は20件近くに上る。
「1回や2回はともかく、偶然にしてはできすぎ」とは先の関係者の言葉。過去の案件で
情報漏洩があったかどうかは不明だが、「“天の声”がDNAになっている」と言われても
仕方がない。(※続く)
◎
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120227/229137/?top_updt >>1の続き
民間出身の石田孝・前会長の時代、NEXCO西日本では子会社が運営しているサービス
エリアやパーキングエリアの恣意的なテナント選定、コンサル会社との不自然なカネの
流れ、多額の交際費の使用などを指弾した怪文書が飛び回った。こういった疑惑の多くは、
その後に設置された外部調査委員会で指摘されている。
無駄な道路を造らない仕組みづくりはもちろんのこと、公団経営の効率化、透明化も
道路公団民営化の目的だった。だが、現実を見れば、疑惑の入札が相次いでいるうえに、
子会社での不透明なカネの動きが指摘されている。
本来であれば、西村英俊会長のリーダーシップが問われるところだが、現在は病気療養中
の身。株主の国土交通省も静観している。迷走を続けるNEXCO西日本。これで膿がすべて
出ることになればいいのだが…。
◎NEXCO 西日本/西日本高速道路会社
http://www.w-nexco.co.jp/