【不動産/中国】世界有数の大都市・上海で「住めない家」が続出 中国のマンションは単なる鉄とコンクリートの塊?[12/02/27]

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1やるっきゃ騎士φ ★
ソースはDIAMONDonline
http://diamond.jp/articles/-/16282
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■故郷の自宅を目の前にホテル住まいをする羽目に
上海の発展のシンボルでもあった高層マンション群、その美しく彩られていた“化粧”が、
静かに剥がれつつある。ついに「安かろう、悪かろう」が露呈し、今、「住めない家」が
続出しているのだ。

こんなことがあった。在日華僑のAさんは、この春節を上海の自宅で過ごそうと帰国したのだが、
彼は自宅に帰れなかった。理由は「壁の水漏れで住めない」というものだった。
Aさんは「故郷に戻ったというのに自宅に戻れない、まるで旅人のようだった」と振り返る。
自分の家を目の前に、ホテル住まいを余儀なくされた。
90年代後半、上海に平米単価5000元で買った60平米の1LDK。
築10年が過ぎた今、住まいのあちこちでトラブルが噴出している。
水の出が悪いシャワー、溢れるキッチンの排水溝、リビングの壁からも水漏れ…。
Aさんは「新しいシステムキッチンに買い換えればマシになるだろう」と思案した。
だが、早い段階でそれがまったく無意味であることが判明した。
問題は設備ではなく、「壁の中」に存在していたためだ。

■企業の社屋から民家まで水漏れが社会問題に
建築物の水漏れは上海のいたる所で社会問題と化している。企業もまた、水漏れに悩まされる。
浦東の高層ビルに入るB社職員は「うちは最上階でもないのになぜか雨漏りだ」と、
天井から水が漏れてくる現状を訴える。

日中の建築事情に詳しい専門家は「日本ならポリウレタンやビニール製が使われる配管も、
中国では2000年代以降も金属製が多く使われた。錆つきなど劣化が早い」とコメントする。
だが、水道管は構造壁の中に埋め込まれ、二次交換ができない。
上海の建築物の多くはこうした欠陥を抱えているのだが、所有者に打つ手はない。

他方、上海に訪れた日本人ビジネスマンが必ず尋ねる、こんな質問がある。
「このマンション、築年数ってどれくらい?」――
外見の劣化の激しさに、つい尋ねてみたくなるのだろう。
「まあ、2年ぐらいでしょう」と回答すると「それホント!?」と驚愕する。
“築浅(ちくあさ)物件”であるにもかかわらず、“築20年ぐらいの中古”に見えてしまうのだ。

前出の専門家は、建築資材の質の低さを指摘する。
「2000年代はバンバン建ててバンバン売る、という現象が上海にも多く見られた。
購入者の動機には『住むため』もあったが、『転売』や『賃貸で運用』も多かった。
また、デベロッパーが売り惜しみする中で、購入者も品質の良し悪しまでは要求できなかった。
建築資材の質の低さには、こうした背景もある」

-続きます-
2やるっきゃ騎士φ ★:2012/02/27(月) 15:56:31.78 ID:???
-続きです-
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民工と呼ばれる、建設現場で働く出稼ぎ労働者の仕事のいい加減さもある。
所有者たちが内装施工の工程管理に、片時も目を離すことができない(中国では内装は所有者が
自分で手配して行う)のは、手抜き工事が当たり前だからだ。

中国では、毎年20億平米の新築住宅が竣工している。100平米を住宅の平均面積だとすれば、
ざっと2000万戸が販売されるという計算となり、これは世界のセメントと鉄の消費量の40%に
相当すると言われている。
だが、建築物の寿命はせいぜい25〜30年程度。イギリスの132年、アメリカの74年に比べると、
格段に短命だ。中国では、「建てたはいいが使い物にならない建築物」が少なくなく、建物の処分が
問題になっている。

■管理組合の組織も困難 希薄な維持・管理コスト意識さて、Aさんはその後、管理会社に
掛け合った。「修繕積立金でなんとか修理してくれないか」と持ちかけたのだ。
中国でも、所有者が管理組合を組織し、管理会社に管理を委託することができる。
毎月の管理費以外に、入居時に修繕積立金を集めてそれを大規模修繕に適用するというやり方は
日本と同じだ。使途については、3分の2以上の所有者の同意が必要となる。

しかし、所有者が集合しない。
所有者の多くが非上海戸籍、いわゆる外省人であり、上海に居住していないのだ。
高級マンションになるほど「お隣さんはアメリカ、お向かいさんは香港、いつもあちこち
飛びまわっていて家にいない」というようなケースも多い。
法人名義での所有も多い。そのため、「マンションを維持管理する」という当事者意識は薄れる。
所有者の出身国籍はバラバラ、本人が住んでいないこともあり歩調は一致しない。
昨今は空室率も高く、管理費を集められないことから、管理会社が撤退するような事態もある。

別の物件では、エレベーターの定期検査が行われていないことが問題になった。
定期検査の議論以前にエレベーターの老朽化は激しく、運行の異常が問題になっていた。
だが、圧倒的多数の住民がメンテナンスに反対票を投じた。
「金を出したくない」、理由は単にそれだけだった。
共用部はもとより、マンションという建築物の長期的な維持・管理には、一切金銭は出したくない、
そんな空気が支配的だ。

「上海は見た目に豪華なマンションは確かに多い、だが管理はまったく日本と違う」と漏らすのは、
都内に在住する中国人所有者のCさんだ。彼女は都内の城北エリアにマンションを90年代に
購入した。築年数は10年を超えるが、「それでも管理が行き届き、資産価値を維持している」
と満足する。共用部の清掃、配水管や防火装置などの定期検査や大規模修繕と、ふだんからの
手入れをまめに行う日本の管理会社への評価は高い。

話を戻そう。Aさんが頼った管理会社は名ばかりのものだった。職員は制服を着用、言葉遣いも
丁寧で、あたかも立派な組織に見えるのだが、長期的展望に立ったマンションの維持・管理能力は
ないに等しかった。
それどころか、解決を訴えるAさんに最後は「我們也没?法!(我々にもどうしょうもない!)、
?找政府!(当局に掛け合え)」と喰ってかかる始末だ。

-続きます-
3やるっきゃ騎士φ ★:2012/02/27(月) 15:56:59.38 ID:???
-続きです-
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■所有することの悲劇 2年後から“住宅難民”が続出!?
Aさんのこの一連の沙汰が示唆するのは、築後10年超を経て起き得るであろう住宅トラブルだ。
上海では俗に「12年説」と言われている。
Aさんが購入したのは、一般市民より少し早い90年代後半だが、その後にわかに高まる
住宅ブームで2002年前後から購入者が増加、上海ではさらに多くの個人がマンションを取得した。
ようやく手に入れた憧れのマイホーム、まさに上海市民は楽しく快適な生活をエンジョイしている
最中だ。
しかし、購入から12年後、再び直面するのは「住宅難」だ。
02年から起算すれば2014年前後から急増するというシナリオだ。
管理会社は動かず、デベロッパーも責任回避。法律は追いつかず、当局も無関心。
今後、Aさんのような住宅難民が続出することは想像に難くない。
持たなくても悲劇、持ったところでもっと悲劇。
「持たざる者」は持ち家がないことを嘆き、「持てる者」は住めない家に嘆く。
皮肉にも、彼らを翻弄するのは「憧れの持ち家」だ。

中国で「持ち家」は男性のステイタスそのものでもあったが、手抜き工事やメンテナンスの手間と
費用、さらに住宅ローンものしかかる。風向きが変われば、これからは「持たざる男」の方が
モテる世の中になるのかもしれない。

-以上です-
著者紹介 姫田小夏�
[ジャーナリスト]
東京都出身。92年より上海との往来を始め、97年から10年超上海に居住。
99年に上海、02年に北京で日本語フリーマガジンを創刊、08年まで編集長。
現在、フリージャーナリストとして日中を往復、中国のビジネス・流行・社会問題を発信。
(後略)