ソースは
http://www.news-postseven.com/archives/20120116_80822.html [1/2]
かつて技術力で世界を席巻した日本製造業の現場では、想像を絶する大きな変化が起きている。
日本の製造業に、果たして未来はあるのだろうか? 経済ジャーナリストの山下知志氏が、
精密機械産業の中心地・諏訪湖周辺をリポートする。
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冬はワカサギ釣り客で賑わう諏訪湖周辺は、日本でも有数の精密機械や情報機器関連産業の
集積地である。日本の製造業のお家芸を支える拠点だ。諏訪湖を囲む長野県諏訪市、岡谷市、
下諏訪町などにはセイコーエプソン、京セラ、沖電気など大企業やグループ企業の工場があり、
周辺には、有力な下請け企業が数多く集まっている。その集積地で「産業空洞化」が進んでいる。
諏訪湖畔に程近い岡谷市のJR岡谷駅前は、日中だというのに人もまばら。
かつてイトーヨーカドーがあった駅前の巨大な商業施設はイベントスペースとして使われていて、
空き家同然。客待ちのタクシー運転手が嘆く。
「いい話なんて何もありません。大手企業の工場閉鎖や生産縮小で、諏訪周辺の下請け企業の倒産、
廃業、人員削減が相変わらず続いています。
地元では、超円高の影響はこれからで、倒産はまた増えるといわれています。
タクシーの利用者も減って、地元のタクシー会社も倒産しました。
運転手の給料だけじゃ家族を養えない。独身者か定年退職者が年金併用でやる仕事ですよ」
昨年6月、諏訪地区に工場のある山王電気が破産した。
従業員は30名。AV機器関連で世界に知られる大手電機メーカーを中心に、
主にプリント基板などを供給してきた。
会社設立は1960年。技術力が高く、品質も安定しているとの評価を得て、
下請け部品メーカーとして半世紀余りを生き抜いてきた。
ピーク時に24億円あった年商は、2010年度には、わずか3億6000万円に減っていた。
岡谷市に同社の破産管財人の弁護士を訪ねた。
「リーマン・ショック以降は、受注減に加えて値引き要請や同業者との競争激化、資材高騰などで
経営悪化に歯止めがかからなかった」(松村法律事務所・松村文夫弁護士)
取引先の倒産で売掛金の回収ができなくなったことも痛手だった。従業員の給料を払えなくなる
可能性もあって、やむなく営業を停止、破産した。同社を知る、ある中小企業経営者がいう。
「山王電気には後継者がいなかったため、メインの取引先が発注量を減らしてきたそうです。
これが引き金になった」
しかし、厳しい見方をすれば、本当に技術力のある会社ならば、発注する側は後継者を
探すように強く求めたはず。それがなかったということは、いまでは代替の利く技術レベルだった
というほかない。
-続きます-