米議会で給与税減税の延長をめぐって議論が交わされた後、
大きな話題になったのはインターネット上の著作権侵害対策だ。
海賊版の映画、テレビ番組、その他コンテンツを配信している海外のウェブサイトを制限する法案が検討された。
だが、海賊版を厳しく取り締まりたいと考えている映画業界と、
ネットを介した自由な情報流通を遮断することに反対しているハイテク企業は激しく対立している。
現行の法律では、
テレビネットワークや映画会社はウェブサイトに対して海賊版映像を削除するよう要請することができ、
サイト側は訴訟を避けるためにコンテンツを迅速に削除する。
ネットの利用を抑制することなく、このシステムは機能している。
しかし一部の海外ウェブサイトは不正コピーしたコンテンツを配信するためだけに存在し
米国の法律では手の届かないところにあるため、映画界はさらに強力な保護を求め、
米企業に対して問題のあるサイトとの取引を停止するよう求める権利を主張している。
米下院の法案、オンライン著作権侵害阻止法(SOPA)も、
上院の法案、ネット規制法案(PROTECT IP)も、幅広い支持を求める一方で不備がある。
司法省が裁判所命令を獲得すると、ネット上のサービス全体(検索エンジン、ネットサービスプロバイダー、
決済事業者、ネット広告)が停止される恐れがある。
例えば大手検索エンジン、グーグルの場合、サイトへのリンクを削除するよう求められるため、
検索結果が表示されない。
また両法案では、広告会社、クレジットカード会社、ペイパルなどのネット決済事業者への資金の流れを断つ裁判所命令を著作権保持者が獲得することにもなる。
著作権保持者は、米国国際貿易委員会(ITC)に対して著作権侵害サイトにリンクする海外のウェブサイトを調査するよう申請し、ITCが悪質サイトに停止命令を出す可能性もある。
映画界が意図的な著作権侵害サイトのみの閉鎖を目的としていると主張しているものの、サイト全体を停止させると言論の自由が阻害される恐れがある。動画サイト「ユーチューブ」が、SOPAに基づき存続するというのは考え難い。
ネットを通じて誰でも自由に海賊版映画をダウンロードできるサイトを遮断することに
躍起になっているハリウッドに同情する。
だが時代遅れのビジネスモデルは、より大きな問題だ。
映画界は、アップルの「iTunes(アイチューン)」登場後、
再び売り上げを伸ばした音楽界に目を向けるべきだろう。
(ブルームバーグ Paula Dwyer、Mary Duenwald)
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/120110/cpd1201100503003-n1.htm