【国策】「アジアの教育ハブ」を目指すシンガポールの国家戦略--アメリカの一流大学が続々進出 [10/09]

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1ライトスタッフ◎φ ★
※長文のため、一部省略してあります。

■リークワンユーが認めた学校

1年ぶりにシンガポールを訪問した。1年前に比べてもその熱気は日本やアメリカを
はるにかに凌駕するもので、やはり経済の中心はアジアにありと痛感した。
そのアジアでもアメリカ高等教育の勢いを実感した。

シンガポールに出向いた理由の一つはシンガポール大学との打ち合わせだ。シンガ
ポール大学にはリークワンユースクールという公共政策大学院がある。公共政策を
学ぶなら世界トップの学校の一つだと思う。実際、中国共産党の幹部候補生をはじめ
ASEAN諸国やインドの政府の若手官僚がこの学校に集っている。日本からもようやく
ではあるが、経産省や金融庁の若手が官費派遣留学をしている。NHKや朝日新聞から
も企業派遣が始まっている。

45年前、マレーシアから切り捨てられ、独立を余儀なくされた都市国家シンガポール。
当時マレーシアとの交渉を仕切ったリークワンユーは、切り捨てられた時、途方に
くれて涙を流しながら独立の記者会見をした。資源も何もなかったシンガポールを、
45年で一人当たりGDPで、日本を上回るアジアで最も豊かな国に仕立てたのが、
シンガポールの公共政策である。

国家と言うより企業に近い運営は、株式会社シンガポールとの異名をとる。物流、観光、
教育、次世代技術、金融等でアジアのハブを目指し、現実に一部では世界のハブとなり
つつある。そのための規制や税制の改正も実に機動的で、インフラ整備も迅速だ。

シンガポールは国が小さいから機動的な国家運営ができた、と日本の評論家は簡単に
言うが、シンガポール同様の人口の少ない国でも、建国から45年で世界トップクラス
の豊かさを実現させた事例はほかにはないのではないか。

■ハーバードの裏切り?

今回の話題はシンガポール大学幹部がその次に漏らした言葉がきっかけだ。

「われわれは名実ともにアジアナンバーワンの公共政策大学院だと自負していた。
ハーバードのケネディスクールとも提携してプログラムも行っている。ところが
そのハーバード大学がライバルになりつつある」というのだ。

ハーバード大のケネディスクールは、リークワンユースクールと単位交換プログラムを
やっている。リークワンユースクールの一年制修士課程で、一学期間ケネディスクールで
学べるようになっている。短期に修士号が取れて、ハーバードでも学べるとあって
このプログラムはリークワンユースクールでも人気のあるプログラムだ。

ところが、ハーバードはシンガポールを取り囲むようにアジア各国の名門大学と提携を
始めたのだ。まず中国の清華大学。ここは中国共産党政府のアドバイザーを多数輩出して
いる名門である。ここの公共政策大学院と提携を始めた。

続いて、ベトナムの名門フルブライトスクール。この学校はアメリカ国務省が多額の助成
をしてホーチミンに設立したベトナム政府の幹部候補生育成機関である。シンガポール
大学幹部は「シンガポールとハーバードの両方で学べるという我が校の看板が薄められ、
中国やベトナムに潜在顧客を取られている」とぼやく。(※続く)

●金融、空港、教育でアジアのハブを目指すシンガポール
http://gendai.ismedia.jp/mwimgs/1/4/600/img_1409d2d5b019319c552507f70d73fc9b44574.jpg

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/22413
2ライトスタッフ◎φ ★:2011/10/10(月) 10:06:58.96 ID:???
>>1の続き

この幹部はさらに、「ハーバードはインドネシアに相当投資をしている。既存の名門との
大々的な提携や新たな学校設立のうわさがある。インドネシアはシンガポールの隣だし、
巨大な教育市場だから影響は大きい」とため息をつく。

国立シンガポール大学は、リークワンユーの名前を戴した名門大学としてアジアでは知られ
ているが、「ハーバードのネームバリューはすさまじい」と大学幹部は断言する。「提携から
はじめて教育需要を探り、自国の本校の学位価値が薄まらない形で、上手に急拡大する
アジアの教育市場に入り込んでくるだろう」と、この幹部は予測する。

■エール大にデューク大、シカゴ大も!

ただ、アメリカの教育機関のアジア進出は、そもそもアジアの教育のハブを目指すシンガ
ポールが仕掛けた面もある。

シンガポールに進出しているアメリカの大学は、ハーバード大学だけではない。2014年
にはエール大学がシンガポール大学とコラボして、リベラルアーツカレッジをオープンする。
エール大仕込みの全寮制リベラルアーツ教育がアジアで始まるのだ。エール大学級の教育が
受けられるとあって、アジアはもちろん、インド、ロシア、オーストラリアからも問い合わせ
が殺到しているという。

また、全米トップクラスの医学部を持つ米デューク大学は、シンガポール大学と提携して
4年生のメディカルスクールを開設している。ここを修了すれば、シンガポール、アメリカ、
そして日本でも認められる医師免許が取得できる。医療・バイオのハブを目指すシンガポール
らしい仕掛けの成果でもある。

金融では世界トップクラスといわれるシカゴ大学のビジネススクールがシンガポールにキャン
パスを持つ。金融のハブ、教育のハブを目指すシンガポールを象徴する存在だ。在職しながら
MBAが取りやすいプログラムが工夫されており、アジアを中心に若手金融関係者が定期的に
キャンパスを訪れる。理科系の名門MITもシンガポールに研究所を置いている。

シンガポールのハブ政策に乗っかる形で、シンガポールを拠点にアジア進出してきたアメリカ
の名門大学は、今後はシンガポール以外のアジア市場を自ら獲得すべく乗り出してくるのかも
しれない。世界で最も巨大で急成長する教育市場アジアを狙わない手はない。

本家アメリカへの留学だけでは足りず、教育機関の整備が追いつかないほどの人材育成ニーズ
を抱えるアジア。英語教育へのニーズも高い。カンボジアでは英語が話せれば月収200ドル、
話せないと月収60ドルだという。アメリカの名門ブランド力と英語教育需要という追い風を
受けて、高等教育の輸出が始まる兆しである。

■TOUDAIに価値なし?

最後に残念な話をひとつ。リークワンユースクールと清華大学とコロンビア大学と東京大学は
公共政策大学院課程での複数学位を取得できる交換留学制度を始めた。東京大学を除く3校の
間での学生の交換は盛んだと言う。ところが東大へ留学する学生の数は壊滅的らしい。東大
でもけなげに全過程英語で授業をやっているという。

東大関係者によると「日本の文科省は、東大と同等の地位を外国の大学に認めてやってもいい、
という態度でOKしてくれた。しかし、実際の交渉をやった我々は、海外から見た東大の地位の
格差に唖然とした」という。(※続く)
3ライトスタッフ◎φ ★:2011/10/10(月) 10:07:09.23 ID:???
>>2の続き

外国人学生はもっと残酷だ。「TOUDAIってレジュメに書いても就職のインパクトにならない」
と手厳しい。寿司やアキバカルチャーだけでは優秀な学生を引っ張ってこられないということだ。
ある東大からの留学生は「このままでは東大は、国内だけで名門って威張っているピョンヤン
大学みたいになってしまう」と自虐的だ。

英語による授業や9月入学と日本の中では急速にグローバル対応している東大でも、今のところ
世界での評価は厳しい。

ただ、私は日本の大学の潜在力はかなり高いと思う。英語の問題で相当ディスカウントを受けて
いるが、アメリカの名門のアジア進出から更なる刺激を受けて、文科省の教育行政も大学自身も、
さらに正確に自らの世界における地位を正しく認識し、改革に励んでほしい。シンガポールでの
滞在を通じてそんなことを強く感じた。

◎執筆者/田村耕太郎
前参議院議員で、元内閣府大臣政務官(経済財政政策担当、金融担当)、元参議院国土交通委員長。
早稲田大学卒業、慶応大学大学院修了(MBA 取得)、エール大学大学院修了、米オックスフォード
大学上級管理者養成プログラム修了。今年から、世界最強のシンクタンク、ランド研究所の一員に。