【海外進出】“出稼ぎ”社員、4.5億本の『ポカリスエット』を売る--アジアで「カイシャ」はいらない [09/30]

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1ライトスタッフ◎φ ★
イスラム教徒が日の出から日没まで断食するラマダン月に入った8月。世界有数の
イスラム都市にして交通渋滞で悪名高いインドネシアの首都ジャカルタでは、
この時ばかりは日が沈むと路上から車やバイクが姿を消す。1日の空腹を満たす
食事の時間だ。

ジャカルタ南部のアル・イクラス中学校では、大広間に約300人の生徒らが集まっていた。
神に祈りを捧げ、待ちに待った日没になると全員に食べ物が配られた。お菓子の詰め合わせと、
大塚製薬のポカリスエットだ。

食事を用意したのは「アメルタインダ大塚(AIO)」の社員。大塚製薬のインドネシア子会社だ。
生徒らには、すべて無料で振舞う。

ここ数年、ラマダン月になるとインドネシア各地の学校でこうした販促イベントを仕掛けている。
ポカリスエットは体内の吸収が早く、断食明けの水分補給に最適であることを広く認知してもらう
目的だ。そして、インドネシアではラマダン月にポカリスエットが最も売れるようになった。

今では年間販売本数が4億5000万本(440ml換算、2011年計画値)。大塚製薬はポカリスエットを
16ヵ国・地域で販売しているが、海外で最も売れる国がインドネシアなのだ。

■たった1人の駐在員に託す

AIOの板東義弘社長が2000年に日本から赴任した当時、販売本数は1億本にも及ばなかった。
「熱帯で暑いためかスポーツ人口は少なく、風呂にも入らない。そして酒も飲まない。『渇きを
いやす』という日本のセールス手法がどれも通用しなかった」と板東社長は振り返る。甘くない
飲料はインドネシアでは売れないとも言われた。

実は、大塚製薬が機能性食品分野の販売・マーケティングのために同国に送り出している駐在員は
板東社長1人。板東社長以外の2人の日本人は、現地にある2工場の管理に専念している。

どうすれば需要を取り込めるかとAIOのインドネシア人社員と知恵を絞った結果が、
「ラマダンにはポカリスエット」だったのだ。ラマダン月には庶民が通うスーパーにも、
ポカリスエット専用の陳列棚が用意される。

学校以外にも、社員が販促のため足繁く通う先がある。病院だ。

インドネシアでは高熱病であるデング熱がしばしば流行する。ここでも、水より吸収が早いことが
売り文句になる。医者や看護師に集まってもらい、ポカリスエットの特徴を紙芝居さながらに説明。
デング熱で入院する患者には1本ずつ置いていく。この結果、病院が勧める飲料となり、消費者の
信頼感とブランド力が高まった。

2万近い島々から成るインドネシア全土に流通網を築いたのも、板東社長の手柄と言っていいだろう。
大塚製薬が食品分野でインドネシアに本格参入した当初は、現地企業との合弁だったが、既に合弁を
解消していたのだ。(※続く)

●中学校の協力を得て学生らにポカリスエットを配り、商品評価も聞く
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20110927/222829/01.jpg

●AIOの販促社員は看護師らの仕事の合間を縫って商品の特徴を説明する
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20110927/222829/02.jpg

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20110927/222829/?top_updt
2ライトスタッフ◎φ ★:2011/09/30(金) 01:09:13.78 ID:???
>>1の続き

AIOの支店はジャカルタなどの大都市圏のみ。それ以外は、ディストリビューターと呼ぶ販売
代理店がスーパーなどに卸す。大塚専門の代理店ではない。現地社員を使って、雑貨などを扱う
卸業者にお願いし、地道に販路を開拓していった。その数は約60に達し、今ではジャカルタ周辺
以外の地域の販売量が全体の7割を占める。

代理店にはAIOの営業マンが張り付き、販売動向に目を光らせる。また、営業マンと代理店が
癒着しないように別の社員に絶えず監視させる。

■採用面接で商売のノウハウを吸収

商売のノウハウは、業容拡大に伴って社員を拡充する中で学んでいった。板東社長は「ネスレや
ユニリーバといった現地で成功した外資系企業の元社員が採用面接に来ると、彼らがどのように
して販路を築き、社員への福利厚生はどうしているのかを聞き、それを生かしていった」と明かす。

大塚製薬でアジア・アラブ地域を統括する東隆・執行役員はこう話す。「海外の駐在員は原則、
1国につき1人しか置かないことにしている」。

なぜか。日本人が2人以上いると、日本人だけですべてを決めてしまいがちだからだという。
そうなれば日本での成功体験にしがみつき、現地に応じた販売・マーケティングの工夫をしなく
なる。何より、現地社員との一体感が生まれず、いつまでたっても組織が現地化できないという
わけだ。

その一方で、現地法人の経営はほぼ駐在員に委ねる。採用はもちろん、テレビコマーシャルなどの
販促活動でも、よほど日本での商品イメージと乖離しない限り、本社は口出ししない。

そして「語学はできなくても、チャレンジ精神がある社員を海外に出している」と東執行役員は続ける。
AIOの板東社長も国内営業畑だったが、粘り強く海外転勤を訴えていた。

9月5日号の日経ビジネスでは「“出稼ぎ”のススメ 空洞化が日本を潤す」という特集記事を組んだ。

「衰えたとはいえ、日本ほど住みやすい国はない。なぜ海外に出稼ぎしなければならないのか」。
特集のタイトルを見て、反発する声もあった。

出稼ぎという言葉には、「貧しさから仕方なく出る」というマイナスイメージが付きまとう。
しかし、今日の日本で出稼ぎすべきは、困難に挑戦しようとする覇気と独立心を備えた人材ではないか。
このことは「起業家精神」という言葉にも置き換えられる。

■“出稼ぎ”の適正を見極める

日本人は内向き志向になったと言われて久しいが、ほんの数年前までは、大企業を飛び出してベンチャー
企業を設立する優秀な人材が数多くいた。ここでいう出稼ぎとは、大企業を飛び出す代わりに日本を
飛び出すことなのだ。急成長を遂げるアジアを考えた時、その先に無限の可能性がある。「起業家」に
とってこれ以上の舞台はない。

日本企業は今、凄まじい勢いでアジア企業のM&A(合併・買収)を進めている。経営者にとって、
それも重要な選択肢だ。だが、もう一度、社内を見回してみてはどうだろうか。

新商品のアイデアが次々と浮かぶ企画力、常にノルマ以上に契約を取ってくる営業力――。多少の欠点が
あっても、会社の枠に収まらない能力を持つ人材が1人くらいはいるのではないか。出稼ぎは、そうした
人材が能力を思う存分に発揮できる場となり得る。(※続く)

3ライトスタッフ◎φ ★:2011/09/30(金) 01:09:28.25 ID:???
>>2の続き

また、大塚製薬の東執行役員が「駐在員は1国につき1人」と言うのは経済合理性にもかなう。例えば、
インドネシアのポカリスエットの販売価格は500ml入りで50円程度。日本のほぼ半分だ。いくら数量が
さばけても、日本ほどには利益が上がらない。
さらに、円高なので現地の利益を日本に戻すと利益はさらに目減りする。人件費の高い日本人社員は
最小限にとどめ、その代わりに現地社員を使いこなす必要がある。何よりも「個」の力が求められる
役割なのだ。

そして、「個」の力がモノを言う出稼ぎの時代では、日本企業は組織のあり方も見直す必要に迫られる。

せっかく優秀な社員が現地で稼げる仕組みを整えても、国内と同じように定期異動を繰り返していては、
それまでの努力が水泡に帰す可能性は大きい。「出る杭は打たれる」という言葉に代表される日本の組織
では、同じような能力の社員が多くなりがち。“規格外”の人材はそうはいない。AIOの板東社長は在任が
10年を超える。

日本的な組織運営から抜けられないがために現地法人の成長が止まり、「日本人駐在員はお飾りで、
業務は現地社員任せでいい」という結論に至るのであれば、それはもったいないとしか言いようがない。
アジアでは現地社員が結果を出せば、報酬面を含めて高く処遇せざるを得ない。それが彼らの価値観であり、
そうでなければ、優秀な社員はすぐに会社を去っていく。

どうせ誰かを高く処遇するのなら、まず出稼ぎに向いていそうな日本人社員にチャンスを与え、とことん
使うくらいのことをしてもいいのではないか。そうでもしなければ、外で稼げる人材はなかなか育たない。
アジアで稼げば日本以上に給料がもらえる。そうなれば、後に続く人材も必ず出てくる。

日本企業も日本人も、アジア抜きには生きていけない時代だ。「カイシャ」の論理から卒業することで
得るものは、双方にとって大きいはずだ。

◎関連スレ(他にもあり)
【提言】“出稼ぎ”のススメ--日本企業も日本人も海外に出よう (日経ビジネスオンライン) [09/05]
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1315200068/

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http://toki.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1316434142/

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