相次ぐ地震や大型台風など天災が猛威を振るうなか、災害リスクが顕在化してきた。
企業でも有事の備えを改めて検証している先が少なくない。
大手損害保険会社系のコンサルティング会社には、事業継続計画(BCP)作りの
依頼が殺到している。
BCPは大災害時に事業への影響を最低限に抑えるためにあらかじめ決めておく
マニュアルのことで既存のBCPの弱点が大震災などで露呈。グローバル企業では、
真に機能するBCPが取引上での最低要件にもなり得るため、プロの力が必要のようだ。
来年4月にはBCPの国際規格も発行される。
損保商品の保険料がリスク発生率と密接に関係することから、損保会社は保有する
膨大なデータベースを生かして研究を続けている。大手損保グループは傘下にコンサル
ティング会社を抱え、多様化する企業リスクへの解決策を提案する。「大震災の日、
わが社のBCPは全く使えなかった。見直したい」と、問い合わせやコンサル依頼が
ひっきりなしだという。
BCPは2001年の「9・11」(米同時多発テロ)で注目され、策定に着手した
企業も多かったが、利益に直結しないため関心は低かった。
しかし、この10年間、SARS(重症急性呼吸器症候群)や新型インフルエンザなど
事業継続を脅かす災害に次々と見舞われ、次第にBCPの重要性も認識された。
その矢先に起きた東日本大震災や福島第1原発事故。夏の電力不足への対応も重なり、
どれをとっても既存のBCPが机上の論理だったことを多くの企業は思い知らされた。
被災地で生産する部品が国内外に届かずに車の生産自体が全面ストップしたため、
商品の流通手段が絶たれた。自社の事業継続計画が万全でも、取引先のBCPが機能
しなければ共倒れする危険性もある。自然災害だけでなくシステムトラブルや感染症、
テロなど多様な脅威が世界的に拡大する時代。ISO(国際標準化機構)も、BCPに
お墨付きを与えて企業を評価しようと動いている。ボルトやねじの国際品質を定めている
BS(英国規格)よりもグローバルな規格だ。
ISO規格取得は取引の必須要件になり、海外を含めて取引先からの要請もハードルが
高くなりそうだ。「ある企業は海外の取引先からBCPについて英文で何百ページにも
及ぶ質問書や要望書が届き、対応に困って相談してきた」(大手損保系リスクマネジ
メント関係者)という。
ここまでくると一企業の担当者レベルではとても対応できない。「この手の話は来年
ISO規格が決まれば、もっと増える。国内外とも取引先企業がISO認証取得をして
いるか否かが企業選別の重要な尺度にもなる」(同)と話している。
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http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20110924/ecn1109241450001-n1.htm