神奈川県川崎市の市営バスが、異常事態になっている。運転手の経路間違いや
無断に行き先を変更するなど4月以降、21件、1カ月に5件の割合で運行
トラブルが起きている。原因のほとんどは「凡ミス」(同市関係者)というから
公共交通機関とは信じがたい、事故につながる可能性もあり、関係者は頭を抱えている。
川崎市交通局は8月30日、4月以降に運行ミスをした運転手13人を停職など
懲戒処分にしたと発表した。塩浜営業所の運転手(49)=同月19日付依願退職=は、
直進すべき県道交差点を誤って右折、違う経路の停留所で乗客2人を乗車。途中で経路
間違いに気づいたが、勝手に行き先表示を変更して運行を続けた。
鷲ヶ峰営業所の運転手(50)は、多摩区内で経路を2度間違え、うち1つは営業所に
戻るまで報告しなかったという。
昨年度の運行ミスは72件で、あまりの多さに今年2月、関東運輸局から行政処分を
受けたが、4月以降も似たようなペースで発生。正直、多すぎる。
同市交通局では、運行ルートなどが記載された「運行指示書」の確認や行き先の復唱、
車内放送に右折や左折の情報を加えたほか、誤りやすいルートの交差点に局幹部を
立たせたり、交差点の前で運転手が声を出す「行き先アナウンス指定交差点」を定めたり…。
改善へ向けてあの手この手で躍起なものの、ミスにブレーキがかからない。
なぜこうもトラブルが相次ぐのか。路線バスに詳しい自動車ライターの外川信太郎氏は、
「川崎市バスは正規職員と嘱託職員、運行を委託する民間事業者の所属など運転士の立場は
さまざまです。制服も車両も責任も一緒なのに待遇が異なることが、緊張感の欠如を招いて
いるのではないか」とみる。
サービス水準を確保する一環で、同局が運転手に「ありがとうございます」「発車します。
おつかまりください」「次止まります」「ご乗車ありがとうございました」という4つの
言葉の励行を求めているが、「運転手なら当然の常識。それをあえて指導しなくてはならない
あたり、どんな体質なのかを物語っている」(民間のバス会社関係者)と厳しい声は尽きない。
川崎市バスをめぐっては運行ミス以外にも、昼寝で乗務をすっぽかしたり、スピード違反を
連発したり。乗客をバスに残したまま営業所前で乗務を放棄するトンでも運転手も。
同市交通局では「みなさまにご迷惑を掛けて申し訳ありません」と平謝りだが、節約志向で
存在感が見直されつつあるバスだけに、安心して利用できる環境を1日も早く整えてもらい
たいものだ。
■今年に入っての主な運転ミス(年齢、ミス内容)
★男性 41 直進すべき交差点を右折。約20分遅れで経路復帰
★男性 47 左折すべき交差点を右折。営業所への連絡怠る。6分遅れで運転再開
★男性 51 くわえタバコで乗車し、火を消さずに車外にポイ捨て。右折すべき交差点を左折。
約5分遅れで正規ルートに復帰
★男性 45 直進すべき交差点で右折。13分遅れで運転再開
★男性 57 直進すべき交差点を右折。3カ月で経路誤り2回
●画像
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/images/20110905/dms1109051546012-p1.jpg ◎川崎市バス(川崎市交通局)
http://www.city.kawasaki.jp/82/82syomu/home/kotumenu.htm ◎
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110905/dms1109051546012-n1.htm