ある調査によると、「メンタルヘルスに問題を抱える社員がいる」と答えた事業所は
全体の56.7%にのぼったという。
不調者の数は3年前と比べて「増加傾向」から「ほぼ同じ」までを合わせると約8割となり、
依然として減少に転じていないようだ。
この調査は、労働政策研究・研修機構が全国の民間事業者(従業員10人以上)5250件から
回答を得たもの。
メンタル不調者が現れる原因について、事業者に回答を求めたところ、「本人の性格の問題」が
最も多く67.7%(複数回答)となった。2位は「職場の人間関係」が58.4%。「家庭の問題」とした回答も
29.1%あった。一方で、会社や職場が責任を負うべき「仕事量・負荷の増加」は38.2%、「仕事の責任の増大」は
31.7%と、ともに30%台にとどまっている。
この結果について臨床心理士の尾崎健一氏は、メンタル不調を「本人のせい」にする会社には、
共通した考え方の誤りがあると指摘する。それは「同じストレスでも平気な人がいるのだから、
不調を訴える人が弱すぎる」という考え方だ。
世の中には仕事が大好きで、体力もあり毎日15時間以上働いても苦にならない人もいる。
しかし、こういう人を基準にしてすべての物事を考えると、耐えられずに心身の健康を害する人が増えてしまう。
そこで、「1日8時間、週40時間」という基準を設定しているのであり、それを大幅に超えた残業をさせながら
「本人のせい」にするのはおかしいという。
「自分がバリバリやってきた達成感の強い人ほど、『これくらいやって当然』という思い入れが強い。
労災認定の現場においても、ストレス耐性が人によって異なることが前提となっている。
メンタル不調者が続出する職場では、現実を踏まえて、経営者や管理者が部下に求める基準が高すぎないか
再考する必要があるでしょう」
・休職経験者「不調者として逃げるのも自衛策」
また、メンタル不調者がいる企業を規模別に見ると、従業員1000人以上の大企業では72.6%と突出して高い。
尾崎氏はこの理由について、大企業はメンタルヘルス対応が手厚く、休職期間が十分確保できるので
『不調者がいる』割合が結果的に高くなったのではないかという。
「現状では『大企業だから仕事がキツい』とは必ずしも言えないでしょう。むしろ閑職に追いやられた人が
休職して『不調者』にカウントされるケースは、大企業に多く見られるのでは。休職制度が充実していない
中小企業では、不調になれば退職を余儀なくされてしまいます」
大手企業ではメンタル不調による休職は、労働者が切れる数少ないカードだという人もいる。
ある大企業に勤める休職経験者は、「高度成長期に会社に身をささげた人は、年を取って高額な給与や
退職金で報われたが、我々にはその保証はない。会社から理不尽な扱いをされたら、『不調者』として逃げる
ことも自衛のために必要だ」と明かす。
http://www.j-cast.com/kaisha/2011/06/27099631.html