情報システムへの不正侵入という問題に関しては、2011年はとんでもない年になった。
「ソニーのプレイステーション・ネットワーク(PSN)が不正侵入のために1カ月近くダウンする」
などという話を去年聞いていたら、そんなことはあり得ないと思っただろう。だが実際にそれが起きた。
今年ハッカー攻撃に遭った有名企業には、任天堂、ソニー、ホンダ、グーグルのほか、
国際通貨基金(IMF)や米航空宇宙局(NASA)といった政府もしくは準政府機関が含まれている。
サイバー攻撃を受けたソニーのPSNと映画・音楽配信サービス「キュリオシティ」からは、
個人を特定できる情報を含む約7700万人分のアカウント情報が流出した。
ソニーは1億7700万ドルの損失のみならず、それ以上の損害として社会的信頼や市場シェアも失うことになった。
影響がどれほど膨らむかは、今後明らかになるだろう。
さらに気がかりなのは、状況が従来とはまったく異なる次元に突入したことを示す、6月前半の不正侵入事件だ。
ことの発端は米情報セキュリティ会社RSAセキュリティと同社の製造工程への攻撃で、
狙われたのは2要素認証システムを使ったトークン(システムへのログイン時に使う電子カギ)の
安全性を守るためのデータだった。
なぜこの攻撃に重大な意味があるのか。
それはRSAのトークンが、ネットインフラの安全性を守る上で決定的に重要な役割を担っているためだ。
同社のトークンは、情報セキュリティへの意識が特に高い企業が、
データへの不正アクセスを防ぐために採用している。
現実世界の例を使って説明すると、大手鍵メーカーの設計図が盗まれ、
大量の家宅侵入が発生するようなものだ。まさにそれが起きたのである。
RSAへの攻撃は、レベル3、ロッキード・マーチンといった米国防総省の契約企業に驚くべき速さで波及した。
ハッカー攻撃の速さと持続期間が長くなるのに比例して、批判もエスカレートしている
。一連の攻撃を受けて、米国防総省は“継続的な”サイバー攻撃は戦争行為に等しく、
従来型の兵器を使った報復の対象になるとする声明を発表した。このような大胆な攻撃は、
大量の資金がなければ不可能であり、それは国家が関与していることを意味する。穏やかでない話だ。
続きます
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by Brian Spector
<ブライアン・スペクター: ロンドンとサンフランシスコを拠点に、
オンデマンド型の暗号化サービスを手掛ける情報セキュリティ・ベンチャー、
CertiVox(サーティボックス)の共同創業者で最高経営責任者(CEO)。
サイバー・セキュリティ業界で20年のキャリアを持つ。>
http://www.nikkei.com/biz/world/article/g=96958A9C93819499E0E0E2E3828DE0E0E2E4E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;dg=1;p=9694E3E7E2E0E0E2E3E2E6E1E0E0