右肩下がりの外食産業を尻目に、105円均一の回転寿司チェーンが急成長しています。
「回転寿司」といっても105円均一とグルメ寿司という二つの業態があります。
市場規模でみると、過去10年で、105円寿司は3倍以上に市場が急成長しましたが、グルメ
寿司市場はほとんど伸びていません。スシローはマグロの大トロでも一皿105円ですが、グ
ルメ寿司では、300円や500円します。寿司ネタの値段を知らない子どもと一緒に行っても、
安心できるという親の心情が大きく働いているのだと思います。
その中でもスシローは、2009年に顧客満足度第1位を獲得(外食部門)。さらに105円均一
の寿司チェーンの売り上げでも、ずっと1位だった「かっぱ寿司」を昨年追い抜き、1位に
なりました。その原動力は、なんといってもネタの良さです。なぜ、スシローは105円寿司
として同じ特徴を持つ「かっぱ寿司」や「くら寿司」よりもいいネタが出せるのでしょうか
。それは、一言で言えば、企業理念の違いです。スシローの企業理念は「うまいすしを、
腹一杯」です。
第一に、ネタにコストを投下しています。他社が原価率40〜45%程度に抑えるなか、スシ
ローの原価率は50%。お客への半分返しをモットーとしており、寿司一つのネタに投下でき
るコストが違います。スシローは年間900億円の売り上げがあり、他社との原価に投資する
差異は数十億円となり、割合以上にお客が実感できるのだと思います。
一方、他チェーンでは、子ども向けに新幹線が寿司を運んできたり、5皿食べるとルーレ
ットが回ったりと家族連れに好評なアトラクションがたくさん用意してあります。しかし、
スシローはそこへは投資をしていません。店舗や本社は質素ですし、社長室すらありません。
第二に、以前は寿司職人だった社長、仕入部、店長の目利きが確かなこと。しかもそれが
業者に知れ渡っているので、外食業界にありがちな「約束したのと違うグレードのネタを
入荷する」という騙しのようなことをされにくい。さらに、ボリュームディスカウントも
ききます。
第三に、セントラルキッチンを持たないこと。そのため店内で提供直前に調理する比率が
高くなり、いいネタをいい状態で提供することができます。海老なんて、店でスタッフが
毎日手でむいているんですよ。つまり、すべての活動が「うまいすしを、腹一杯」に向けら
れているわけです。
少子高齢化が進む中で、わかりやすい「お得感」を求める日本人が増えてきています。
とことんネタにこだわるからこそ、お客がどんどん来る。おかげで、ネタを新鮮なうちに
提供でき、次のネタへの投資もできる。いまスシローには、「うまい」を起点にしたいい
循環が起きているのです。
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ジェネックス パートナーズ
高橋勇人
Hayato Takahashi
ジェネックス パートナーズパートナー。外資系コンサルティング会社を経て現職。外食を
はじめとする多店舗展開業態のハンズオン型支援を得意とする。業績向上と組織改革、買収
後統合支援が主要テーマ。
大高志帆=構成
ソース
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110610-00000001-president-bus_all 関連スレ
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http://toki.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1306736828/