「今回の震災で、首都圏のマンション市況が変化したことは間違いないですね。
東京湾岸の物件は、ある意味、堅調ですが、液状化に見舞われた千葉の浦安エリアに
ついては、新築・中古物件も含めてかなり厳しいようです」(不動産経済研究所取締役
企画調査部長・福田秋生氏)
東日本大震災から1ヵ月---。液状化現象によってライフラインが寸断されていた
千葉県浦安市は、上下水道がようやく復旧し、市民生活が戻り始めた。
首都圏の湾岸地帯を中心に起こった「液状化」現象については、本誌でも大々的に
取り上げたが、それはあまりに衝撃的だった。液状化とは、埋め立て地や河川の近く
など、水分を多く含んだ地盤に強い揺れが加わり、地中の水分が一気に噴き出して
しまう現象をいう。浦安市や江東区豊洲など各地で、道路から泥水が溢れ出し、
マンホールが1m以上も持ち上がるなど被害が出た。
4月11日、本誌は浦安市を再訪したが、浮いたままのマンホールや、傾いた電柱など、
その爪痕は各所に残されていた。この湾岸エリアを中心として、首都圏のマンション
販売状況に大きな変化が出始めたというのである。つまるところ、湾岸高層マンション
の人気暴落だ。
不動産経済研究所によると、今年2月の首都圏(1都3県)の新規マンション発売戸数は、
前年同月比で約25%増の3468戸。2ヵ月ぶりの増加で、特に湾岸エリアを中心とする
高級マンションが多かったようだ。ところが、大震災が起こった3月は一転して減少と
なり、少なくとも10%減という。
価格にも変化は出始めているようだ。「榊マンション市場研究所」の榊淳司氏がこう
解説する。
■1億円物件もついに値下げ!?
浦安市以外の湾岸地区の高層マンションも、液状化と「高層難民」報道のダブル
パンチで、売る側は戦々恐々という。不動産ジャーナリストの山下和之氏が言う。
「当初は、地震の直接的な被害がなかったため、販売にそれほど大きな影響はないと
強気な見方をする関係者も多かったのですが、ここにきて、『湾岸地区で積極的に
買いたいという人は減るのではないか』と、不安の声が聞かれるようになった。
建物自体は、支持層まで杭を打っているので地震でも倒壊しないことに自信を持って
いるのですが、問題は、浦安エリアのようにライフラインが絶たれると、陸の孤島に
なってしまうことが証明されてしまったこと。都内の豊洲や東雲(しののめ)、有明に
関しても絶対に大丈夫と言えるのか。客も心配でしょうが、売る側も確証がないだけに、
悩んでいるようです」
震度5強の揺れに見舞われた東京では、高層マンションで倒壊などの被害を受けた
建物はなかった。が、問題はその後である。前出・福田氏が言う。
「地震後2週間以内にライフラインが復旧すればまだしも、浦安などは復旧に1ヵ月も
かかってしまった。これは致命的です。今後、液状化の危険について、販売時の重要
事項説明の義務になると思われますから、危険度が高いエリアは売りづらくなるで
しょう。浦安に関しては、現在、中古物件の売買自体もなりたたなくなっていると
聞きます」(※続く)
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