東日本大震災で職を失った被災者を農作業で雇用支援しようと、内陸部の農家が
動きだしている。農家は春作業の繁忙期を控えて就職面接会を開くなど働き手を
探しているが、高齢化や若者の流出などで人手不足。沿岸部の求職者とマッチングを
図ろうと、農協や行政に被災地の情報収集や求人の周知、仲介など協力を求めている。
就農支援機関では被災者対象の求人も始まり、農業による支援の輪が広がっている。
岩手町江刈内の岩手広域交流センターでは15日、同町などの農家による就職面接会
が開かれた。これまでは各自が職業安定所などに求人を出していたが、年々求職者が
減っているため、初めて合同面接会を実施した。
野菜農家や酪農家25人が参加。11月ごろまでの雇用期間で計60人を募集したが、
訪れたのは約30人。今月には春レタスの定植作業などが始まるが、人手不足は深刻だ。
面接会後、農家は被災地への情報発信を新岩手農協に要望。キャベツなど約60ヘク
タールを経営する岩手町久保の三浦正美さん(55)は「生活が落ち着くまでの短期間
でも、農作業の雇用が役に立つなら受け入れたい。希望者がいるのなら沿岸に行って
説明会もしたい」と意欲を見せる。受け入れる場合、住居探しの援助も考えている。
岩手町は県や振興局を通じて沿岸部との連携を模索。新岩手農協東部営農経済センター
営農支援対策課の斎藤誠課長は「農家と被災者の考えが一致するのか把握する必要が
ある。農家で経営形態や雇用期間も違うので、どうやって進めるかはまったくこれから
の状態」と慎重に語る。
県内の農業法人や大規模農家らでつくるアグリ・コラボ・サークル(ACC)も、
沿岸の求職者や内陸への避難者が農業の手伝いを希望した場合、会員内で受け入れる
考えだ。
ACC事務局でトマト生産・銀河農園(紫波町)の橋本正成社長は「食糧だけでなく、
雇用面でも支援できればいい。被災者に具体的な内陸の就労先を示すなど、沿岸と
連携してもらうよう町役場にもお願いしている」と強調する。
全国農業会議所は、ホームページなどで被災者を雇用したい農業法人などの求人情報を
掲載。15日現在、全国で353件、県内では6件の求人がある。
岩手町での就職面接会は25日も開催。問い合わせは新岩手農協東部営農経済センター
(0195・61・2511)へ。
●求職者を面接する農業者。繁忙期を控えて人手不足の中、被災者の雇用支援の
可能性を探る=岩手町・岩手広域交流センター
http://www.iwate-np.co.jp/news/y2011/m04/d16/nogyo0416.jpg ◎
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110416_11