アジア市場でジェット燃料価格が急騰し、東京電力福島第1原子力発電所の事故による旅客減に苦しむ
航空業界に追い打ちをかけている。石油精製各社が、より利益率の高い軽油の生産を重視しているためだ。
シンガポールでは今年1〜3月期に、軽油とジェット燃料がそれぞれ28%上昇し、2009年以降の
四半期で最大の値上がりとなった。
軽油の3月の上昇幅が6%だったのに対し、ジェット燃料は4.5%にとどまったため、石油精製各社は
軽油の生産に重点を置いている。
◆旅客減少に続き
国際航空運送協会(IATA)は3月2日、燃料価格の上昇により、航空各社の今年の収益は
50%落ち込む可能性があると指摘。豪カンタス航空とシンガポール航空は3月、燃料高により
燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を引き上げた。
東日本大震災で被害を受けた日本の製油所からのジェット燃料輸出減少も価格の押し上げ要因になっており、
ブルームバーグニュースの調査では、4〜6月期も値上がりは続く見通しだ。
震災により一時、日本の精製能力の29%が停止した。石油元売り最大手JX日鉱日石エネルギーは、
4月の原油処理量を前年同期比で19%減少させることを明らかにしている。ブルームバーグの試算では、
日本の2月のジェット燃料輸出量は、1日当たり13万3000バレルだった。
アジアの石油精製各社は、ジェット燃料と軽油の生産割合を、中間留分である両燃料間の価格差や
プレミアム(割り増し価格)によって変える。
店頭原油デリバティブ(金融派生商品)ブローカー、PVMオイル・アソシエーツ(ロンドン)によると、
ジェット燃料のプレミアムは3月に65%縮小し、今月4日時点で1バレル=50セントと
昨年9月以来最低となった。
◆震災余波で需要低迷
米エネルギーコンサルティング会社パービン&ガーツのアナリスト、ラビ・ナラヤナスワミー氏
(シンガポール在勤)によると、世界最大のエネルギー消費国の中国では、国内工場による電力需要で
工業用燃料が不足。以来、軽油の収益率はジェット燃料をしのぐようになった。
同氏は、日本の震災復興時に軽油の需要は増し、ジェット燃料のプレミアムはますます狭まると予測する。
IATAのビジャニャーニ最高経営責任者(CEO)は3月29日、
「航空各社は今年、燃料高から悲惨な利益率に直面している。1〜3月期は非常に困難な時期だった。
震災により航空需要の低迷は加速するだろう」と指摘した。
(ブルームバーグ Yee Kai Pin)
ソースは
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110411/mcb1104110504022-n1.htm http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110411/mcb1104110504022-n2.htm