日本の震災から発生した世界的な製造業の混乱は、生産管理方法の見直しを迫るものだ。
2010年に噴火したアイスランドの火山は、その火山灰で欧州全土の航空輸送を混乱に
陥れた。世界の製造業のサプライチェーンは、部品の在庫を抑える「ジャスト・イン
・タイム」供給時代の到来以降では初めてとなる大きな試練を受けた。
そして今、日本を襲った四重の災害――地震、津波、原発事故、電力不足――が、
火山よりもはるかに大きな圧力をサプライチェーンに加えている。大地震から3週間
経っても、混乱が及ぶ範囲や、収束までにかかる時間の見通しは、いまだはっきり
しない。
現在、世界の製造業者が受けている衝撃と、2008年の金融危機で銀行システムを
打ちのめした衝撃には、いくつかの興味深い共通点がある。
■2008年の金融危機とよく似た問題
いずれのケースでもとりわけ驚かされたのが、危機によって思いがけない関連性が
明らかになったことと、その影響が広い範囲に及んだことの2つだった。どちらの
ケースも、当初はシステムの限られた部分――金融の場合はサブプライムローン、
製造の場合は経済の中心地から外れた場所で生じた自然災害――で始まったかと
思われた問題が、瞬く間に広範囲に広がった。
銀行が流動性の突然の「蒸発」を経験したように、工場は今、これまで確実に届いて
いた部品が入ってこないという事態に直面している。
金融規制当局が「シャドーバンキング(影の銀行)」システムと難解なデリバティブ
取引について自らがいかに無知だったかを思い知ったように、メーカー各社は、サプ
ライヤーに納めるサプライヤー、そしてさらにサプライチェーンの下位にある企業に
ついて、ほとんど把握していなかったことを痛感している。
リーマン・ブラザーズの破綻後、同社が単なる1つの金融機関ではなく、多くの事業体
が絡み合って成り立っていることが明らかになり、他の銀行は、自らが負うリスク
資産へのエクスポージャーの大きさを把握するのに四苦八苦した。部品から製品を
組み立てるメーカーは今、自分たちのサプライチェーンも同様であることに気づき
始めている。
■「重要すぎて、なくてはならない」サプライヤー
一部の金融機関が「大きすぎて潰せない」ことが分かったのと同じく、一部の日本の
サプライヤーも、「重要すぎて、なくてはならない」ことが明らかになっている。
例えば、三菱ガス化学と日立化成工業の2社は、スマートフォンなどの機器のマイクロ
チップ部品を接合する特殊樹脂の分野で、市場の約90%を支配している。どちらの
会社の工場も、震災の被害を受けた。
アップルの「iPod(アイポッド)」に使われている小型バッテリーは、市場の70%を
占めるクレハのポリマーに頼っているが、同社の工場も被災した。
現在、世界中の製造業者が、供給が極端に減った部品や材料を確保しようと競い合い、
価格を高騰させている。日本と米国の自動車メーカーは、生産規模の縮小を余儀なく
されている。
トヨタ自動車は、500品目ものゴム、樹脂、電子部品の不足を懸念している。現在
手元にある部品の在庫が尽きた時、どれほど事態が悪化するのかは、いまだ明らか
ではない。(※続く)
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5791