日本のデフレ病を治すためには、金融政策だけでは不十分なのか?
偉大な輸出大国の1つである日本は、こともあろうに通常はスイスに対して貿易赤字を出している。
それはなぜか? ロレックスに聞けばいい。
日本はフランスやイタリアからも、日本が両国に売るより多くのものを買っている。
それはなぜか? カネのかかる悪習を少し挙げるだけでも、ボルドー、ブリー、マスカルポーネ、アルマーニがある。
日本では自動車、家電製品、衣類などの実用品の価格が下落する一方、このような高級嗜好品は概ねデフレ知らずだ。
それでは一体なぜ、日本企業は薄利にもかかわらず実用品を大量生産し続けるのか?
そしてこの状態は、日本のしつこいデフレ問題を説明するのに役立つのだろうか?
デフレの真犯人
『デフレの正体』の著者である藻谷浩介氏の頭はこうした疑問でいっぱいだった。
この本は刊行後7カ月間で販売部数が50万部を突破した。読者の1人は菅直人首相だ。
藻谷氏は、日本のデフレは金融の問題というよりは、むしろ企業の誤った意思決定と人口動態に関係した構造的な問題である側面が大きいと主張している。
もし日本企業が新しいタイプの高級品を開発すれば、
増加している裕福な高齢者層の潜在需要を解き放ち、減少傾向にあり比較的貧しい若年層に賃金をもっと支払うことができると藻谷氏は考えている。
当然ながら同氏の意見は、物価下落を反転させるのに十分な対策を講じていないとよく非難される日銀で共感を呼んでいる。
日銀の白川方明総裁は2月7日の記者会見で、同じようなテーマに触れた。
デフレの根源的な原因は、労働者数の減少と生産性上昇率の低下が原因で引き起こされた日本の国内総生産(GDP)成長率の趨勢的な低下傾向だと述べ、
金融緩和はデフレ圧力を和らげるうえで重要だったが、それだけでは十分ではないと言い切った。
生産年齢人口の減少に対応し、企業は高齢者や女性の労働参加率を上げることが求められる。
また、研ぎ澄まされた「もの作り」の概念を超え、「仕掛け作り」に取り組む必要もあるという。
白川氏の説明によれば、これはかつてソニーが「ウォークマン」でやったように、新しいストーリーを描くことによって需要を引きつける製品の開発だ。
多くの人がこの考え方を責任逃れと評するだろう。
ビジネスマンたちは、日銀が円安に向けた取り組みを強化すれば、アジアの急成長市場をもっとうまく開拓できると文句を言っている。
エール大学の浜田宏一氏のような批判的な経済学者は、日銀が国民の財布に現金をもっとたくさん持たせたら、内需が活気づくと主張する。
多くの人は、日本のデフレを終わらせるためには政策の連携が必要で、
中央銀行を含む政府機関がデフレ問題の解決の重責を他者に押しつけることが最大の危険の1つだと考えている。
見え始めた1つの方向性
しかし、ようやく協調的な考え方が出てきたように思われる。
白川氏は、自由貿易の促進によって生産性を高めようとする菅氏の取り組みを支持している。
>>2に続く
ソース:JBpress
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5450 ソースのソース:The Economist
Ending deflation in Japan
An old problem
Will it take more than monetary policy to cure Japan’s deflationary ills?
http://www.economist.com/node/18119075?story_id=18119075 >>1の続き
日本が国家財政を健全化するために消費税を引き上げた場合、
日銀は財政引き締めの影響を相殺するために金融緩和政策を使う用意があるかもしれない。
白川氏と藻谷氏の意見が最も端的に合致する点は、
日本企業は1500兆円に上る日本の家計貯蓄の大半を持つ高齢者の潜在的な購買力を引き出すことによって、内需を拡大する必要があるということだ。
白川氏は、医療、介護、観光、レジャー産業などの需要が拡大すると考えている。
この10年間で日本のフィットネスクラブの売上高が4割増加したのは、国民の寿命が延びるにつれて健康意識が高まっていることが原因だと白川氏は考えており、
そのような分野での規制撤廃が需要を伸ばすと述べている。
藻谷氏は、もっと厳しい見方をしている。
藻谷氏は高齢者が預金を貯め込むことにウンザリしている。
藻谷氏によれば、高齢者の貯蓄行動は「リア王コンプレックス」によるものだ。
つまり高齢者は、金銭を過度に与えると自分は見捨てられると思っているというのである。
そして藻谷氏は、高齢者が資産を自分の子供ではなく孫に遺贈することを促す税制改革を支持している。
長寿社会の裏の側面の1つは、遺産を相続する側の平均年齢が67歳という高齢に達していることだと同氏は指摘している。