米ナスダック市場の元運営会社会長バーナード・メードフ受刑者が運営していた投資会社の
破産管財人、アービング・ピカード氏は2日、マドフ受刑者による数十億ドル規模の詐欺行為
を可能にさせたとして、金融大手のJPモルガン・チェースを提訴した。同氏は賠償金など
60億ドル(約5020億円)を超える支払いを求めている。
ピカード氏はここ数日、詐欺に遭った被害者のため不正な利益を取り戻そうと立て続けに訴訟
を起こしている。
マドフ受刑者が逮捕され、同受刑者の投資会社が破産申請を行ってから12月11日でちょうど
2年になるが、同日が被害者の資産を取り戻すための訴訟を起こせる最終期限。
ピカード氏は今週、マドフ受刑者から引き揚げた資金が投下した資金を上回る「真の受益者」
を相手取って100件以上の訴訟を起こした。先週には、同受刑者の親族、投資会社の元従業員、
それに顧客を提訴している。
ピカード氏の弁護士は声明で「マドフ受刑者が怪しいと分かった後も、JPモルガンは意図的
に詐欺行為を見過ごした」と指摘し、「マドフ受刑者による詐欺行為を可能にした金融機関は
たくさんあるが、JPモルガンはその中心となり、詐欺行為に全面的に加担した」と述べた。
JPモルガンは、マドフ受刑者による詐欺行為に加担したというのは「全く根拠がなく、明らか
なうそ」と主張。声明で「マドフ受刑者の投資会社の管財人による申し立ては、注目を集め
ようとして事実と法律をねじまげたものだ」と非難した。JPモルガンは、詐欺事件が発覚
して以降、多くの情報を管財人と共有し、管財人の質問にも答えてきたと反論、徹底的に争う
姿勢を示している。
マンハッタンの連邦破産裁判所に起こされたこの訴訟は、約10億ドルの利益と手数料の返還
と、54億ドルの賠償金の支払いを求めている。原告は、JPモルガンがメードフ受刑者の
事業の正当性を疑問に思っていたにもかかわらず、何も行動に移さなかったと主張している。
この訴訟はピカード氏が起こしたマドフ受刑者による詐欺事件関連の訴訟の中で最大級。
09年3月に数十年にわたって詐欺行為を行っていたことを認めたマドフ受刑者は、懲役150
年の刑を言い渡されて現在服役している。
ウォールストリートジャーナル
http://jp.wsj.com/Business-Companies/node_156021