【コラム】900兆円を超えた国の借金、「それでも日本は大丈夫」という話は本当か(池田信夫) [10/11/17]

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4@@@ハリケーン@@@φ ★
>>2のつづき

<4> 元利をすべて返済した国はない。借り換えしていけばいい?

 これは政府の税制調査会の専門家委員会委員長である神野直彦氏の持論である。永遠に借り
換えることができればいいが、問題は民間が借りてくれるかどうかだ。

 個人や企業の場合には、借金の限度はその支払い能力(資産や将来の収益)だが、政府の
場合は徴税権が担保になっている。したがって本質的な問題は、現在の政府債務を返済する
ための増税が可能かということだ。

 IMF(国際通貨基金)などの推計では、日本の政府債務を維持可能にするためには、消費税
率を30%以上にする必要がある。消費税を3%から5%に上げるのに10年かかり、それ以来、
税率を上げられない政府に、そういう増税が可能だろうか。

 増税が間に合わず、国債が民間で消化できなくなった時は、日銀に国債を引き受けさせる
しかない。これは財政法の第5条に定める国会決議をすれば可能だが、日銀が際限なく国債を
引き受けると、通貨が市中に供給されてインフレが起こる。

 インフレが起こると、実質的な政府債務(名目債務/物価水準)は減るので、石油危機の
時のように物価が5年で2倍になると、政府債務は半減する。これによって財政危機は回避で
きるが、国民の金融資産も半分になってしまう。

 「国が借金して景気対策に使えば景気がよくなって税収が増え、財政危機は解決する」と
いう話もあるが、これは「靴紐を引っ張れば空に上がれる」というような話だ。

 もし財政支出を増やせば税収がそれ以上に増えるのなら結構な話だが、2009年度の政府支出
(当初・補正)は前年度から17兆円増えたが税収は6兆円減った。

 こうした財政楽観論には「政府は民間より賢く金を使える」という前提があるが、政府が
それほど賢ければ、もともと今のようなひどいことにはなっていないだろう。

 政府の浪費によって財政危機になったのに、その対策を政府にやらせようというのは、倒産
した会社の再建を、その会社をつぶした社長に任せるようなものである。

-以上-