環境などの成長分野に投融資した金融機関に低金利の資金を供給する日銀の新貸出制度を活用し、三井住友銀行が設けた
「環境配慮企業支援ファンド」で、医薬品業界では初めて、医薬品原料メーカーのアルプス薬品工業(岐阜県飛騨市)が融資を受けた。
同業界は「一般的には環境関連融資の基準を満たすのが難しい」(三井住友銀)といい、日銀の新制度を利用した資金需要創出の
モデルケースといえそうだ。
三井住友銀は7月、このファンドを総額500億円で設立。アルプス社は私募債も含めて7億円の融資を受けた。
日銀の新制度により、融資の利率は日銀貸し出しの利率(年0・1%)と市場での調達金利の差にあたる年0・4%ほど下がったという。
アルプス社は1947年創業、従業員320人。飛騨市の2工場と富山市の1工場を拠点に医薬品原料や化粧品原料を製造している。
設備の老朽化で、工場の建て替えを含め新設備の導入を検討しているところにこのファンドができた。
柚原昌昭取締役は「医薬品業界では、工場を建て替えて完全移行するのに3年以上かかり資金が寝てしまうため、低金利の商品は
ありがたい。新設備を導入すればコスト削減にもつながる」と話す。
このファンドは、融資条件として企業が先進的な環境配慮を行っていることが求められる。
アルプス社の事業は製造過程で環境負荷が大きくなりやすいが、すでに重油ボイラーから液化石油ボイラーへ切り替えて二酸化炭素
(CO2)の排出量を減らすなど環境配慮の取り組みを進めており、医薬品業界では初めて、三井住友銀が設定したファンドの
融資基準を満たした。
同社は調達資金を利用して上野工場(飛騨市)に廃液処理能力の高い新設備を導入する。工場拡大も検討しているという。
三井住友銀によると、ファンドの反響は大きく、相談案件の合計額はすでにファンド総額を上回っている。
新貸出制度に関して銀行業界では「既に実施してきた取り組み」との指摘もあるが、新ファンドが設備投資の呼び水になるケースも
出始めている。
▽ソース:中日新聞(CHUNICHI Web) (2010/10/14)
http://www.chunichi.co.jp/article/economics/news/CK2010101402000019.html