【経営/労働】"名ばかり有給"が消える?--国際会計(IFRS)導入に動く日本企業 [09/20]

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1ライトスタッフ◎φ ★
2010年3月期から日本で任意適用が始まった国際会計基準(IFRS)の
本格導入に向け、国内企業の準備が進んでいる。上場企業に対し、15年にも
強制適用が始まるIFRSは、従来の日本基準にはなかった会計処理が求められ、
企業経営への衝撃は大きい。社員に身近なところでも、年次有給休暇の未消化分が
企業の負債として計上されるため、「有給をとれる雰囲気にはない」といった
日本の企業風土を変える可能性さえある。小売業界を中心に現金値引きの代わりに
広く普及しているポイント還元分は、売上高からさっぴかれ、見かけ上の減収要因
にもなる。

IFRSの強制適用は12年に金融庁が最終判断するが、15年か16年には
スタートするのは確実な情勢だ。このため、大手企業には前倒し導入を目指す
動きが目立っている。

NECは13年3月期からの適用を目指して準備中だ。同社はIFRSの導入に伴う
システムにかかわるコンサルティングをビジネスチャンスととらえており、先行導入
に踏み切ることで、顧客に信頼性の実績をアピールする考えだ。

ソフト情報サービス関連に対するIFRS導入に伴う特需規模は「11年度から
3年間で約1兆円」(大和証券キャピタル・マーケッツ)にも上るとみられる。

■消える?「名ばかり」有給

国際会計基準(IFRS)の強制適用に先駆けて、各事業部門の傘下に海外事業所が
入っているカンパニー制度を導入した旭硝子も、「グローバル展開を意識した経営
強化の一環」として、13年12月期から導入する構えだ。

内需型企業の代表格の電力業界の関心も高い。東京電力は強制適用の2年前までに
準備を整える方針だ。「国際基準と日本基準との差異で、グループ全体への影響を
調査する必要がある」(同社)とし、09年9月にプロジェクトチームを設置して
分析を急ぐ。

現在、任意適用でIFRSを導入しているのは日本電波工業1社だけだが、金融庁の
方針が決まれば、前倒し適用が一気に広がるとみられる。

■日本型経営に影響

新たな会計基準の導入は、企業をみるモノサシが変わるということだが、その余波は
日本的な企業風土にも及ぶ。象徴的な例が有給休暇の扱いだ。

「財務諸表を通じて、有給休暇の未消化分を意識しないといけなくなるので、企業は
有給休暇の取得をいっそう促進する方向に動くかもしれない」

大和総研の吉井一洋制度調査担当部長はこう指摘する。

年次有休暇は継続勤務年数に応じた日数で、取得権利が発生する労働基準法で定め
られた制度。6年6カ月以上、継続勤務した場合は20日間、労働者は取得できる。
有給休暇の有効期限は付与された日から2年間で、会社による買い取りは禁止されて
いる。

しかし、2008年中の1人平均年次有給休暇の付与日数平均(厚生労働省の09年
調査)は18日間で、取得日数は8.5日。取得率は47.4%にとどまる。完全
消化にはほど遠いのが現実で、「名ばかり休暇」の企業は少なくない。

IFRSはこうした未消化分に対して、「有給休暇債務」として会計処理を求めている。

※続く

◎ソース
http://www.sankeibiz.jp/business/news/100920/bsg1009200501000-n1.htm