残暑が続く。食欲がなくても、果物なら何とか食べられそうだが、不思議にも、バナナと
キウイを除く果物の消費量は軒並み減少している。「面倒くさい」という消費者のわがまま
ぶりが明暗を分けているようだ。【小島正美】
◇「安くて手軽」バナナは消費増/リンゴは皮むき、種出し嫌われ/酸味苦手な若者、ミカンも不振
表を見てほしい。総務省の家計調査データに基づく消費者の果物の購入数量だ。過去5〜
10年間の推移を見ると、リンゴ、ミカン、ナシ、ブドウ、スイカ、モモ、メロンなどは軒
並み減少。増えているのはバナナとキウイだけ。要因は何か。
「安くて手軽に食べられる。これが最大の要因でしょう」と言うのは、果物と野菜のプロ
である杉本晃章・杉本青果店主(東京都足立区)。
バナナは安いうえに皮をむくだけで朝食代わりに食べられる。ここ1、2年はダイエット
ブームにも助けられた。輸入会社のドールは6月下旬、東京都渋谷区と稲城市にバナナの自動
販売機を設置。値段は1房390円、1本だと130円で売れ行きは上々という。
キウイは半分に切りスプーンですくって食べられる手軽さと健康イメージが受けているよ
うだ。値段も1個100円程度と手ごろ。いまはニュージーランド産が出回る。日本は最大
の得意先。ニュージーランドの生産者たちは拡大鏡でキウイをチェックし、ふぞろいなもの
は除外して最高品質だけを日本に輸出する気遣いぶりだ。
これに対し、リンゴ、モモ、ナシ、ブドウなどは、皮むきや種出しが面倒で敬遠されがち
だ。杉本さんによると、野菜もカボチャ、ゴボウ、サトイモ、トウモロコシなど、煮たりゆで
たり、皮をむいたり、下ごしらえが大変なものは売れないという。
不思議なのは、皮をむくだけで簡単に食べられるミカン。売れてもよさそうだが、消費量
は過去20年間で半減した。「若い世代で酸味を嫌う傾向が不振の要因。女性だと皮をむく
ときに白い筋がつめに入るのを嫌う向きもあるようだ」(日本園芸農業協同組合連合会)
こうした中、ミカン産地の福岡県では、冷凍食品販売会社「八ちゃん堂」(同県みやま市)
が今春、皮をむいた冷凍ミカン「むかん」(3個入り約400円)を博多駅などで販売し始め
た。「シャーベット感覚で食べられる」とミカン消費の拡大に躍起だ。
果物は甘いので「糖分が多く太りやすい」とか「血糖値が上がる」とのイメージがあるが
、「それは誤解」と田中敬一・農研機構・果樹研究所専門員は指摘する。「1日に1〜2個
の果物は高血圧や脳卒中など生活習慣病の予防に役立つ」(田中さん)
農水省と厚生労働省が生活習慣病予防のためにまとめた「食事バランスガイド」でも、1日
1〜2個の果物(約200グラム)の摂取を勧めている。
ソース:毎日jp
http://mainichi.jp/life/today/news/20100905ddm013100178000c.html