防衛省は自衛官など約二十五万人が加入する国内最大規模の共済組合団体
生命保険で、とりまとめ役の幹事社を来年四月、AIGエジソン生命から
明治安田生命に交代させる。今年七月、増田好平前事務次官が明治安田の
顧問に就任したことから、省内からは「幹事社交代は顧問就任の手土産
ではないか」との声が出ている。
防衛省の団体生命保険はAIGエジソンと日本生命を幹事社とする二つの
グループがある。幹事社は自衛隊基地に営業員を置く負担がある一方で、
掛け金の過半を引き受ける。顧客の自衛官は「体が資本」のため、うまみは
大きいとされている。
かつては東邦生命と協栄生命の二社で取り扱ってきたが、ともに経営破綻
(はたん)。二〇〇二年から二つのグループに引き継がれた。生保の組み
合わせは防衛省が決める。
今回、幹事社を交代させる理由を、川嶋貴樹厚生課長は「もともとAIG
エジソンは基準を満たさなかったが、暫定的に幹事社とした。昨年十月に
呼びかけたところ、五社が幹事社を希望し、会社の規模、評判、健全性に
ついて審査した結果、明治安田生命が適当と判断した」という。
「基準を満たさない」会社に九年も幹事社を任せてきたこと自体が問題だが、
増田氏の顧問就任との関係は「ない」と否定する。増田氏は昨年八月に退官、
現在、防衛省顧問でもある。官僚トップの事務次官が生保の顧問になるのは
初めてだ。
増田氏は「幹事社交代が決まったのは退官後なので関与していない。明治安田
からは今年五月に打診があり、引き受けた」とし、明治安田生命広報部は
「大所、高所からの意見をもらうため」と説明している。
それでも省内の一部で問題視されるのは、幹事社への天下りが目立つからだ。
一〇年度まで五年間をみると、グループ内の他社が一佐で辞めた自衛官を
二人ずつ受け入れたのに対し、AIGエジソンでは防衛施設庁長官や局長
・将官クラスらの十一人、日本生命は防衛研究所長や将官ら八人が顧問に
就任した。
明治安田は官房長を含む五人を採用し、幹事社二社を猛追。天下りゼロの
大同はグループから外れ、担当した保険(5%)は明治安田が引き継いだ。
「天下りの人数が防衛省との関係を決定づけると疑われても仕方ない」と話す
幹部もいる。
<防衛省の団体生命保険>
防衛省共済組合が主催する、自衛官・職員が対象の団体定期保険。加入率は
96%。1口100円で組合員は6口以上、50口まで。2グループあり、
100口まで加入できる。共済組合からの保険引き受け割合はグループ幹事社の
AIGエジソンが45%、日生22%、第一12%、明治安田11%、富国6%、
住友4%。別のグループは幹事社が日生で63%、明治安田15%、第一13%、
富国7%、住友2%。
◎ソース
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010082502000033.html