1999年、三洋電機のある社員のもとに、米アップルの創業者スティーブ
・ジョブス氏からメールが届いた。自社の技術を飛び込みで売り込み、
その返事が届いたのだった。
「三洋電機 井植敏の告白」(大西康之、日経BP社)に、そんな逸話が紹介
されている。売り込んだ内容は、自社のオーディオをアップルで採用しないか、
デジタル・ダウンロード・プレーヤーの開発をしないかということだった。
しかし交渉は成果を出せないまま決裂した。三洋も独自で開発まではしなかった。
その後、アップルが発売したのが携帯音楽端末「iPod」。世界的にヒットし、
アップル復活の起爆剤となった、あの商品だった。
三洋のアイデアがヒントになったのか、既にアップルが構想を持っていたのかは
分からない。三洋にアイデアを商品に育てる力があったかどうかも分からない。
はっきりしているのは、今度「SANYO」のブランドがなくなるということ
だけである。
人生には「もしも」がどこまでもついて回る。「もしも」を掲げて他人の栄華を
うらやむこともあれば、冷や汗をかくこともある。ただ「もしも」は、どこまで
追いかけても幻にすぎない。いくつもの「もしも」を重ねて、SANYOは
姿を消す。
太平洋、大西洋、インド洋を越えて飛躍しよう―社名に込められた願いは
実現した。噴流式洗濯機やラジカセなど数々のヒット商品は、今も人々の
思い出に残る。その事実は、この先も消えることはない。
◎ソース 四国新聞
http://news.shikoku-np.co.jp/kagawa/column/201008/20100807000074.htm