【ブダペスト】ハンガリー経済省内には、政治的「革命」を宣言し、同国が「自治能力」
を取り戻したと訴える兆しがある。たとえ国際通貨基金(IMF)や欧州連合(EU)の支援
を失っても、自らの経済政策を掲げようとする新政権の決意を示す兆しだ。
IMFとEUは、ハンガリーの歳出削減に向けた措置が不十分だとして救済融資に関する
同国との協議を最近打ち切った。ただ、IMFは交渉再開に前向きな姿勢を示している。しか
し、ハンガリーのオルバン首相は、自国だけで対処する方針であることを示唆している。
オルバン首相は選挙で地滑り的に勝って5月に政権を握ったばかり。IMFとEUによる
救済のために経済成長促進や雇用創出に向けた自身の計画で妥協を余儀なくされるなら、ハン
ガリーは両機関の救済なしに独力で生き残れると考えを明確に打ち出している。
オルバン政権の高官は「経済的自由に向けた戦いだ」と述べ、「ハンガリーの財政的自由
を取り戻しているところだ」と訴えた。
IMFやEUの予算削減アプローチに対するハンガリーの反抗は、巨額の公的債務を抱えて
救済を受けているギリシャなど他国の政府に緊縮プログラム実施を迫る両機関の幹部にとって
、歓迎しかねる動きだ。
オルバン首相はハンガリーが共産主義から民主主義に移行する初期の段階でロシア軍撤退
を訴えて名をあげた。ポピュリストの同首相が推進する政策について、側近は「愛国主義的な
経済政策」と呼ぶ。IMFとEUに対する反乱は、17世紀にオーストリア、20世紀にソ連と、
他国と戦った歴史の長いこの国で共感を呼んでいる。
ある高校教師は「ハンガリー経済をどうするか、誰もわれわれの代わりに決めるべきでは
ない。国は主権を持つべきだ」と訴え、オルバン首相とフィデス党が良くやっていると評価した。
IMFとEUは2008年、200億ユーロの融資パッケージを提供してハンガリーを救済した。
国の債務が年間国内総生産(GDP)の約80%に上る同国は当時、国際金融危機を受けた信用
逼迫(ひっぱく)で資金調達ができなくなっていた。
ハンガリーは、IMFとEUの融資契約の条件である10年の債務目標GDP比3.8%を守る
方針を示している。しかし、どうのように達成するかはIMFに関係がないとハンガリーの
当局者は語る。
政府当局者が特にいらだっているのは、予算不足を埋めるために課した新たな銀行税に対す
るIMFとEUの批判のようだ。両機関は、今年10億ドル近くの税収を目標とする新税につい
て、融資に水を差し経済成長の足かせになるとしている。
関係筋は、決裂した両機関との交渉でオルバン首相自身が重要な役割を果たしたと指摘。
「ごく小さな詳細でも首相に報告しなくてはならない」と述べた。同首相はEUとIMFの
提案を基本的にすべて拒否したという。
ソース:ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
http://jp.wsj.com/World/Europe/node_87918 >>1のつづき
IMFと欧州委員会のスポークスマンはコメントを控えた。
IMFやEUと新たな契約を結ばなければ、ハンガリーのいわゆるスタンドバイローンは
10月に期限が切れる。このローンを失った同国政府は来年、財政面でのセーフティーネット
のない状態で、他の債務に加えて救済融資の返済を始めることになる。ハンガリーは昨年以来
、救済融資資金を引き出しておらず、今年は資本市場で自力の資金調達ができている。しかし
、アナリストは、この資金調達能力はIMFとEUあってこそのものだと指摘。両機関の存在
が、同政府が賢明な政策を実行している保証になっているとの考えを示した。
両機関なしでは、ハンガリー政府に厳しい目が向けられるだろう。ブダペストのKBC銀行
のエコノミストは「ハンガリーはIMFなしでは、生き残るための優れた経済政策の策定を
迫られるだろう」と予想。「ハンガリーは自ら市場で資金調達する必要が出てくる。そのため
、業績を日々測定されることになる」と述べた。
同国は7月29日、旺盛な需要を受け575億フォリント(約228億円)相当の国債を発行した。
ただ、懸念の兆しは残る。オルバン首相の所属するフィデス党が4月の選挙で勝ってから、
海外投資家によるハンガリー国債の保有が7.7%減少している。
記者: Gordon Fairclough
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