広島県福山市鞆町でホテル「鴎風(おうふう)亭」などを経営する鞆スコレ
・コーポレーションの村上正高社長は、昨年9月に破産決定し、同社の
関連会社が購入した鞆町の老舗旅館「對山(たいざん)館」の改装計画を
明らかにした。
江戸末期や大正期の建物の趣を生かした<和風モダン>をイメージした
高級感のある宿を目指すといい、10月中旬に「汀(みぎわ)邸 遠音近音
(おちこち)」の名称で再出発する。村上社長は「新たな層の観光客を
呼び込みたい」と意気込んでおり、地元の観光関係者も「鞆の魅力アップに
つながれば」と期待している。
對山館は、江戸時代末期の創業とされ、鞆町で最も古い宿泊施設の一つ。
約1100平方メートルの敷地に、鉄骨5階建ての本館と、江戸時代と
大正時代に建てられたとされる2棟が残る。各部屋から鞆観光の目玉の
弁天島や仙酔島が見渡せることが宿の魅力の一つとなっていた。
對山館の経営破綻を知った村上社長は「歴史があり、立地も良い施設が、
観光以外に利用されるのは不本意」として現代風の高級旅館に改装する
ことを決め、取得に踏み切った。改装費を含めた事業費は約6億円。
老朽化が目立つ大正時代の建物(木造3階建て)は取り壊すが、跡地には
解体した建物の瓦や木材の一部を活用して、瀬戸内の海や波、島をイメージ
した庭とスロープを造る。江戸時代の建物(木造2階建て)は玄関口として
活用する。
本館は、内部を全面改装し、40〜100平方メートルの個室を17室作る。
琉球畳を使ったり、中高年層から要望が多いベッドを取り入れたりして
「モダンな和室」を演出。全室に露天風呂とテラスを設け、くつろぎながら
瀬戸内海の風景が楽しめるようにする。5階には、貸し切り用の大浴場を設置。
外観も塗装し、木材に見える格子状の飾りを付ける。
「汀邸」は「水際の家」の意味で、「遠音近音」は、昭和初期に鞆に滞在した
歌人が、瀬戸内海をポンポンと音を出して走る船を詠んだ歌から取ったという。
宿泊料は、平日の2人利用で1人2万7000〜3万8000円と、同町の
宿泊施設では最高の価格帯に設定、年商3億2000万円を見込む。村上社長は
「個人客に特化したグレードの高い宿で、鞆の魅力を存分に楽しんでほしい」
としている。
福山観光協会の平靖行事務局長は「全国から観光客が増える中、鞆の一等地に
高品質の旅館が再開するのはうれしい」と歓迎。地元の鞆の浦観光情報センター
の片岡明彦事務局長も「客の要望も多様化しており、風光明媚(めいび)な場所に、
魅力ある旅館が出来ることで、より鞆の浦を楽しんでいただけるのでは」と
期待している。
●江戸末期のものとされる建物。改装後、旅館の玄関口となる
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20100727-661415-1-L.jpg ◎鞆スコレ・コーポレーション--ホテル「鴎風亭」
http://www.ofutei.com/ ◎ソース
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100727-OYT1T00849.htm