【食品偽装】「なんだ、これは」「もしや」--事故米不正転売を見破った農水省職員の目 [07/26]

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1ライトスタッフ◎φ ★
2年前に終わっていたかにみえた事件が、再び動き出した。事故米の不正転売問題で、
神奈川県警が26日、偽装・転売にかかわったとされる4社の捜索に踏み切った。
約3千トンもの事故米が食用に化けていたことを浮かび上がらせたのは、1人の農林
水産省職員の目だった。

「なんだ、これは」。昨年9月、ある酒造業者の事務所で、農水省地方農政事務所の
職員が1枚の伝票に目をとめた。「米国産 ミニマムアクセス(MA)米」。仕入れ元は
米穀業者の名前が記されていた。

国産の加工用米が決められた用途以外に使われていないかを調べる、通常の立ち入り
調査の最中だった。輸入米に高関税をかける代わりに一定量の輸入が義務づけられた
のが、MA米。これが酒に使われることはあり得ないわけではないが、その場合も
地域の酒造組合などを通して供給されることが多く、米穀業者経由のことはほとんどない。
この職員は不自然に感じた。

「もしかしたら」。職員の頭に、MA米の事故米が食用に不正転用されていた2年前の
事故米問題がよぎった。「念のため調べてみたい」。情報は「流通監視チーム」に伝え
られた。

このチームは、2008年秋に事故米問題が発覚した後に農水省内に設置された非公式な
組織だ。福岡農政事務所が96回も偽装業者の工場を立ち入り検査しながら見逃していた
ことを受けて発足した。米の流通を担当する総合食料局の職員が、JAS法を管轄する
消費・安全局の「食品Gメン」に同行して研修を受けた。検査マニュアルをつくり、
検査は抜き打ちに改められ、モノの流れだけでなく通帳も含めカネの実際の流れも調べる
ようになった。

流通監視チームが伝票を調べ、業者を一つ一つたどった。取引の流れは複雑で解明に時間が
かかったが、今年春になり、焼酎の原料になったのは事故米だった可能性が高まった。
今年4月から6月にかけ、食用への偽装に関与したとみられる4社に立ち入り検査を実施。
聞き取り調査に対し、協和精麦の幹部は「米を飼料用に加工したことは一度もない」と
認めた。台帳をたぐると、偽装は計3155トンにのぼっていた。

この3155トンを含む5251トンについて農水省は08年11月、「飼料用に使われた
ことを確認した」と発表していた。それだけに、偽装の発覚について協議する農水省の幹部
会議は重苦しい雰囲気に包まれたが、公表と告発に反対する意見は出なかったという。
「結果的には2年前の自分たちの失敗を掘り起こすことになったが、偽装を今になって
見抜くことができたと前向きにとらえ、今後に生かしたい」。農水省幹部の一人は言った。

◎ソース
http://www.asahi.com/national/update/0726/TKY201007260261.html

※参考記事
「事故米、食用に転売容疑 4社を家宅捜索 一部は焼酎に」
http://www.asahi.com/national/update/0726/TKY201007260079.html

「事故米の不正転売、新たに82トン 農水省、4社告発へ」
http://www.asahi.com/national/update/0722/TKY201007210632.html