高岡の伝統産業「高岡銅器」で、海外市場を狙う動きが本格化してきた。
高岡銅器協同組合の販路開拓事業が国の「JAPANブランド育成支援事業」に採択されたことが追い風となり、独自ブランドを
設立し、世界で通用する商品開発に乗り出す動きが相次ぐ。
実際に中国、東南アジアで受注が増えており、国内市場の低迷を海外でカバーする流れが強まっている。
約70社が加盟する高岡銅器協同組合は、今年度から「販路改革10年計画」をスタートさせた。柱は海外販路の開拓。
戦略策定事業の委員を務める仏壇仏具製造「関菊」(高岡市)の関秀道社長は「単年度事業では思い切った展開ができない。
海外に打って出るなら長期的な戦略が不可欠だ」と強調する。
海外展開に弾みが付いたのは、販路開拓事業が5月に中小企業庁の「JAPANブランド育成支援事業」に採択されたため。
調査費などの補助を受けられるが、最大のメリットは高岡銅器が「JAPANブランド」として国のお墨付きを得たことだという。
関係者は「新商品の海外売り込みも有利に働く」と期待する。
関菊は今年度から「縁具 祈(いのり)」と銘打ったブランドを展開、日用品やインテリア用品の新商品開発に乗り出した。
洋間に合う商品を想定し、ガラスと銅器を組み合わせた日用品などを提案する。
関社長は「金工の技術が集積する高岡の強みを生かし、研ぎ澄まされたデザインで普遍的な日本の美を形にしたい」と話す。
今月2日から3日間、都内で開かれた国際見本市でも高岡銅器が注目を集めたという。
「モメンタムファクトリー・Orii」(高岡市)は、自社の銅器着色技術を生かして仕上げた時計や小物入れなどを出品。
銅器の色とは思えない真っ青に仕上げた商品が来場者の興味を引いた。
「高岡銅器の技の可能性を知ってもらえた」と折井宏司社長は語る。
昨年から、中国、東南アジアでの受注が増えており、商機拡大につなげたい考えだ。
海外市場を狙った商品開発に力を入れるのは銅器メーカーの「能作」(高岡市)。
来年1月にフランス・パリで開かれるインテリアの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」への出品を決めた。
3千社以上がブースを設け、出展には厳しい事前審査を通過する必要があるが、同社は富山県内で唯一2年連続で出品する
ことになる。
1月に開発した、内側に金ぱくを張ったスズ製の器は、台湾のレストランチェーンから4百個の受注があり、“海外仕様”の
派手めのデザインが評価された。「高岡銅器の技が海外の眼鏡にかなったあかし」と、能作克治社長は話す。
高岡銅器の販売額は1990年の374億円をピークに減少の一途をたどり、直近では半分程度の規模に減ったとされる。
国内では全国一の銅器産地として知られる高岡だが、「海外で認められれば、国内での再評価につながる」(業界関係者)と
海外進出が“逆輸入”に弱い国内市場にもプラスに働くと期待する声も出ている。
JAPANブランド育成支援事業…世界に通用する地域産品のブランド力を高めるため、補助金を出して小規模事業者などを
支援する。初年度は戦略を策定するための調査費として上限500万円が補助される。中身が評価されれば、2年目以降に
最長3年間にわたり事業費の3分の2の補助が受けられる。
▽ソース:北國・富山新聞 (2010/06/08)
http://www.toyama.hokkoku.co.jp/subpage/K20100608303.htm