「シーブリーズ」「角瓶」「仁丹」…。消費者になじみ深い往年の人気商品ブランドが復活を遂げている。
マンネリ化もあって一時は売れ行きが伸び悩んでいたが、“昔の名前”の威力は健在だ。
大胆な販売戦略の見直しを契機に新たな客層を掘り起こしたり、かつての顧客を取り戻して息を吹き返している。
資生堂は平成19年、制汗剤「シーブリーズ デオ&ウォーター」のターゲットを
海に行く若い男性から女子高生に切り替え、白いシンプルな容器をカラフルなものに刷新した。
今年は3月に香りを2種類増やして8種類としたほか、修学旅行の宿泊先に加え、
予備校とカラオケ店でも試供品の無料配布を始めた。
明治35(1902)年に米国で生まれ、国内では昭和44年に発売された「シーブリーズ」は
“サーファー御用達”として愛用されたが、レジャーの多様化で海に出かける男性が減り、
刷新前には人気に陰りが出ていた。
それが路線転換の結果、21年度の売り上げは刷新前の18年度の4倍以上に増加。
平成12年から国内とアジアの販売権を持つ資生堂は「女子高生文化の影響が大きい台湾や韓国でも
販売を検討したい」と意気盛んで、今期も前期比20%以上の売り上げ増を狙う。
19年からウイスキーの「角瓶」をソーダで割る「角ハイボール」の飲み方を提案してきたサントリーは、
20年末に1万5千店だった取り扱い飲食店を1年間で6万店に増やした。中高年にはおなじみのハイボールに、
20〜30歳代の若者が食いついたためだ。価格が1杯あたり300〜400円台と手ごろで、すっきりした味も人気だ。
口中清涼剤「仁丹」を明治38年から販売する森下仁丹は、生薬独特のにおいを抑えたビジネスマン向けの新商品
「JINTAN116」を3月に発売した。狙いは40歳前後の「アラフォー」だ。
「購入者は70歳以上が7割を占め、近年の売り上げは横ばい」という仁丹にとって新商品は実に34年ぶりで、
同社は「商品イメージを変えたい」と顧客層の拡大に期待を寄せる。
一方、三菱自動車はかつての顧客を取り戻した。3〜14年に販売したスポーツ用多目的車(SUV)「RVR」を
2月に復活させたところ、3カ月間で目標を約3割上回る約6500台を販売した。
スキーブームの中で初代RVRを購入した40〜60歳代の男性が、若いころを懐かしんで買っていく例が多いという。
商品動向に詳しい電通の四元正弘・電通総研消費の未来研究部長は「日本が元気だった時代の世界観を味わい、
前向きになりたいのでは」と消費者の購入動機を分析する。
往年の人気ブランドの復活は企業にとって商品を新規に開発するより資金や手間がかからない場合が多く、
今後も幅広い製品分野で試みられそうだ。
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100529/biz1005291740008-n1.htm 資生堂の制汗剤「シーブリーズ デオ&ウォーター」はカラフルな容器が女子高生に支持されている
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