東京都が都内約1400の大規模事業所を対象に1日から始めた二酸化炭素(CO2)の
キャップ・アンド・トレード制度は、国内の地球温暖化対策をけん引する制度として注目されている。
オフィスビルなどを対象に加えて総量規制するのは海外にも先例がなく、
規制方法を巡って意見が割れている国にも影響を与えそうだ。
一方で、多くのテナントを抱える商業ビルや研究用に大量の電力を使う大学などからは、
義務達成を危ぶむ声も漏れる。
◇まず大規模事業所 中小、他地域波及も狙い
新制度を通じて東京都が狙うのは、東京を世界有数の「低炭素型都市」に変えることだ。
国に先駆けて規制をかけ、動きの鈍い国を動かそうとする意図も見える。
また、観光や住みやすさなどの面で大都市同士が魅力を競い合う「都市間競争」の時代に入り、
環境分野でトップを走れば大きな利点があるとみる。
CO2など東京都の温室効果ガス排出量は07年度で5852万トンと全国の5%弱。
その約2割が今回の規制対象になった大規模事業所の分だ。
まず大所から始め、他地域や中小事業所に削減ムードを広めたい考えだ。(中略)
◇大学「研究に影響も」 ビル「省エネで当面様子見」
JR東京駅前にそびえる新丸の内ビルディング(地下4階、地上38階)。約150店舗が入るこのインテリジェントビルは、
使用電力を青森県六ケ所村で作られた風力などの再生可能エネルギーで賄い始めた。
年間のCO2排出量は、化石燃料を使う場合に比べ3分の2(約2万トン)も削減できる。
所有する三菱地所は「環境負荷低減はテナントにとっても経費削減になる」と話す。
ただし、同社は都内に約30棟の規制対象ビルを所有するが、他のビルは当面、省エネなどで対応する。
テナントに終日取引する金融機関などが入ると、コンピューターシステムなどの稼働で消費電力は増え、
天候次第で空調の稼働状況も変わる。「減らしたくても減らせないのが実態」と担当者は言う。
最終的には排出量取引に頼る可能性もある。
事業系で最もCO2排出量の多い本郷キャンパス(文京区)を抱える東京大は、08年度までに全キャンパスの
蛍光灯20万本を消費電力を約半分に抑えられるインバーター制御に換えるなどの対策を実施した。
磯部雅彦副学長は「今後5年間で平均8%の削減は厳しい。大学は研究、教育活動の拡大という社会的使命を担っており、
目標達成のために研究などを控えるのは本末転倒だ」と頭を抱える。
■ことば
◇東京都の計画の概要
電気や燃料の使用量が原油換算で年間1500キロリットル以上の事業所約1400カ所が対象。
うち工場は約300カ所で、他はオフィスビルや商業施設、大学、官公庁など。
それぞれの事業所について02〜07年度の任意の連続3年間の平均排出量を「基準排出量」とし、
そこから削減義務率(5年間の第1計画期間ではビル・商業施設が原則8%、工場が6%)を割り引いた排出量上限
(キャップ)までの削減が義務付けられる。
自前で削減できなければ、他の事業所などとの間で削減量の枠を売買(トレード)する必要がある。
http://mainichi.jp/life/ecology/news/20100402ddm003010100000c.html