企業経営のグローバル化が新たな段階に進み出したのかもしれない。
パナソニックは、国内外で計1390人を予定する2011年度の新卒採用計画で、
海外採用比率を前年度の約6割から過去最高の約8割に高めるという。
国内採用は210人減の290人で、オイルショックで採用数を絞った1976年(156人)以来の
低水準というから極端な人材採用の海外シフトぶりだ。
一方、トヨタ自動車は一連のリコール問題を契機に、日本の本社が一元的に担ってきた
品質保証管理の仕組みを改め、地域ごとに現地化を進める。新興国の成長の取り込みや
信頼回復に向けた顧客への密着など、事業戦略上の個々の事情もあるだろう。
だが両社の動きは、日本に経営の重心を置いたグローバル化から、より現地に根ざした多国籍型の
グローバル化へと舵を切り始めた「ニッポン株式会社」のシフトチェンジを象徴しているようにも思える。
「韓国のサムスン電子では社内の公用語が英語だそうだが、日本ではいまだに商談の席で
英語で議論できる人材が足りない」。鳩山政権の新成長戦略の具体策づくりを検討している
経済産業省の研究会で、出席したある委員がこんな指摘をしている。
日本で採用した社員を企業が育て、実務を通じて国際舞台の経験を積ませ、グローバル経営の
担い手に引き上げる。そんな従来の人材育成の仕組みでは国際競争に勝ち残れないとの問題意識だ。
そうしてみると、バブル崩壊後の「就職氷河期」の再来といわれる今の就職戦線の厳しさは、
不況による一過性の採用抑制だけが要因ではなく、採用枠を争う相手がグローバルに広がり始めた
ことによる構造的な厳しさが根底にあるのかもしれない。
企業が求める人材の質や採用形態自体が変わりだしたということだ。
その点、介護や農業など内需の育成に雇用拡大を求めるだけで、グローバルに競える人材育成の
教育政策が全くみえてこない鳩山政権の新成長戦略は何とも心もとない。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/100401/bsg1004010503001-n1.htm